秋うらら、ちかつゆのいいとこどり|今年も歩こう熊野古道③(牛馬童子~小広王子)

第3回 今年も歩こう熊野古道に参加しました。

初秋の爽やかな陽気にめぐまれて、中辺路のなかでもとりわけ穏やかなちかつゆを歩きます。ここは語り部さんなしでも始めやすいビギナーにおすすめのコースです。

今回は友人も誘って3人で申し込み。なかなかのミラクルが続いて、二度とないであろう忘れられないちかつゆ体験でした。

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第3回 今年も歩こう熊野古道

  • 開催日 2018.10.21(日)晴れ
  • 参加費 2,000円(保険、弁当、お茶つき)
  • コース 中辺路(牛馬童子 道の駅〜小広王子 約8.6km)
  • 集合  9:15 古道歩きの里ちかつゆ

歩行記録

▲道の駅(牛馬童子ふれあいパーキング)~小広王子までのログ

9:10 集合&送迎

今回の集合は「古道歩きの里 ちかつゆ」です。駐車場が広いというのと、ご厚意でスタート地である道の駅「牛馬王子ふれあいパーキング」までピストン送迎してくださるとのこと。(ここでは同様の方法で熊野古道体験プランを提供しています。詳しくはこちら

ちかつゆに隣接するAコープ(スーパー)のすぐ脇で受付をし、送迎車で約5分かからず「牛馬童子ふれあいパーキング」に到着。ここで各班にわかれて出発します。時間ギリギリの私たちでしたが、集合してみると男性1名以外は全員女性。語り部さんも多屋さんという女性ガイドさん。参加者は30~50代くらいと平均年齢も若く、ちょっと楽しい予感がしました。

9:30 出発

 

道路を渡り、山へ入ります!

ここは車を停めて、牛馬童子像だけを写真におさめて引き返す観光客もいます。ほんとに熊野古道をチラっと見るだけ!って感じですね。そのため軽装の方が多く歩くので、転げ落ちた事故も過去にあったそう。熊野古道としては、めっちゃくちゃやさしい道ですが油断しちゃダメですね。

9:55 24番ポイント

初めての方もあるので、番号標識の説明からしてくれます(詳しくはこちら)。田辺消防本部には中辺路の地図が描かれた電光掲示板があって、救急要請があるとちゃんとその番号が光るんですよと教えてくれました。へー!見てみたい!

この写真を横切るものがなにかは、ネタバレになりますので内緒。

 

10:00 カナダ産の松の木

太くて大きい松の木の下に、これまた長~~~い松葉が落ちています。この松は国産種ではないそうです。普通松葉は2本ですが、3本に分かれているんだとか。「4本の松葉を見つけると恋が叶うと言われています」とおっしゃるので、これは!と目の色を変えて探します。20人に1人くらい見つけるということでしたが、私達の班では4人も見つけることができました。すごーい!と大喜び。

さらに私の友人はなんと5本に分かれた松葉を発見!過去2人しか見つけたことがないそうです。ええええーどうすんのそれ!あんたすでに結婚してるやん?!

10:05 一里塚跡

一里は4km。和歌山城から一里ごとに目印となる塚がありました。ほとんどは土を盛った「塚」か、大きな「松の木」だったそうですが、ほとんどその形は残っておらずここも少し盛り土らしきものがあるだけです。

それにしても気持ちのいい空気!なんでも森林から人を安らかにする成分(森を浄化し害虫から守るフィトンチッドという成分)が降り注ぐらしいのですが、それがこの朝10時頃が最も多いんだそうです。花王が研究したそうで松葉のジンクスより信憑性が高いですよ。森林浴って科学的に意味があったんですね。深呼吸うう~!

10:25 牛馬童子像

若くして法皇となった花山(かざん)様が牛と馬にまたがっています。心無い人が破損してしまったので首から上は復元したものです。(ちなみにその第一発見者の親子は、私が小学校で大変お世話になった先生のご主人と息子さんだったので、よく覚えています)

ここは箸折(はしおり)峠と言って、近露(ちかつゆ)の地名の由来となったストーリーがあります。皆、多屋さんの心のこもった解説に聞き入っていますが、私ひとりだけが衝撃を受け…口を開けていました。今聞いたお話と、私がいつも親しくさせてもらっている語り部の会、安江会長のお話と花山法皇の印象がまるでちがうのです!!!

ぜ、ぜんぜんちがう…!」と言ってると「安江さんは落語家だから~」と多屋さんが笑います。語り部さんごとにちょっとずつ脚色がちがうみたい。

ちなみに安江会長は今回、班の全体統括で参加。現れてはいなくなるのを捕まえて、なんで!?と聞いてみると「同じ中辺路の会でも、師匠が違うんだよ~」とのことです。みなさん、ぜひ聞き比べてくださいね。

 

10:40 展望(東屋から、ちかつゆを望む)

箸折峠を下ると、ちかつゆの里が見えます。「ここからあそこまで15分ですよ、その先にあるあの小学校も越えて行きますよ」と行程を説明してくださるので、イメージがつかめます。この辺の下りはけっこう急な石段で滑りやすいので注意です。

途中で珍しいアサギマダラが飛んでいて大はしゃぎ。この蝶は旅をする「渡り蝶」で、長野県あたりで羽化して台湾や中国まで飛ぶんだとか…!その飛来の途中で紀伊半島や中国、四国、九州などにやってきますがとにかく不思議な生態です。そして美しいのです。15年ガイドをやってきて中辺路に出たなんて初めてだと多屋さんが一番驚いていました。超ラッキーです。蝶だけに?

でも私、子供の時に見たことがあります。そんな珍しい蝶だと知らなかったのですがアザミが道沿いにたくさん咲く地域で、青い羽がたくさん舞っておとぎ話のようだったけど、なるほど群れで移動するのかと納得しました。(フジバカマ、アザミ等が好きだそうです)

11:05 近露王子跡

近露王子で「大木の大きさを測ってみましょう」と、参加者で手をつないで木をぐるっと囲みました。大人2人の両手の長さのサイズです。知らない人と手をつないでちょっと照れますが楽しい。

「このあとの一方杉はもっと大きいんですよ。空気が澄んで、そこは私が中辺路でも一番好きな場所です。」と多屋さんが言います。

歴史や知識というのは勉強すれば得られますが、素晴らしいと思う気持ちがあってこそ言葉となり、ものの良さは人に伝わるのだと思うのです。語り部さんも参加者も、何に感動するかはそれぞれの感性。私はこういうところがガイド付き企画の素敵なところだし、何度歩いても違う魅力があっておもしろいのだと思います。

特に多屋さんのガイドは、地域への愛とあたたかい心が言葉のはしばしにあふれ出ていて、今日の澄んだ青い空と、可憐な秋の花々と調和してるよう。何度か歩いたちかつゆですが、今までで一番ゴキゲンな気分でした。

11:10 お弁当休憩

お楽しみのお弁当、特注品だそうです。「うわーめちゃくちゃ美味しそ~~!」「今日はほんまに来れてよかったよ~」大寝坊してくれた友人も感激です。この素晴らしいお弁当でイベントの印象がさらに良くなったことは言うまでもありません。大きな声で宣伝したいですが『特注』ということで…どこで作られたかはナイショ。

11:50 ちかつゆのメインストリート?

 

この辺りにはカフェ3軒が並んでいます。古道歩きの里ちかつゆからも歩ける距離で、川や美術館もあってすごくいい雰囲気の場所です。(現代の三軒茶屋と私は呼びたい。そしてできればお茶したい。)

ちかつゆの画家である野長瀬晩花が、DAIGOに似てる(!?)という多屋さん。まじか!かなり男前だったそうです。

12:00 野長瀬家の墓

このあたりの豪族であった野長瀬一族のお墓です。蚊が多めです。

歩きながら「しかしいいお天気で最高ですよねー」と言うと、多屋さんが「ホントに今日は、麗らか」とおっしゃった。

うららか…。」初めて聞く日本語に出会った外国人のようにつぶやく私。その横で同じように友人も「うららか…。」と繰り返し「ふふふ、その気持ちわかる~。」と笑います。そうかこんな日のことを麗らかというんだな、秋にも使うんだな、私の口からはなかなか出ないや、日本語って美しいな~と思いました。(春の季語だが秋も使うみたいです)

12:10 ちかの小学校

小高い場所にある可愛い学校。災害時の避難場所でヘリポートにもなるそうです。

 

12:15 近野神社

 

近露王子など、周辺の王子はここに合祀されたそうです。残念なことに熊野古道はどこもかしこも合祀、合祀…明治政府は本当にひどいことをしたものです。

このあと、山道に入ります。短い距離ですがちょっと急坂で一汗かきます。

 

12:40 お地蔵様

参詣の途中で行倒れる人も少なくなかった熊野古道。今と違って命がけです。白装束に金剛杖の参詣者、この杖は塔婆で亡くなれば墓にしてもらうための覚悟を表します。

語り部さんが見せてくれたのは「往来一札之事(おうらいいっさつのこと)」と書かれた通行手形です。「参詣のために関所を通してください、日が暮れたら宿を貸してやってください、そして亡くなった時は連絡はいりません、どうかそこに葬ってやってください」とあります。

しかし住所・氏名・年齢の書かれたこれを見た古道沿いの方は、その方が何処で亡くなり弔われたのか、飛脚を使って故郷へ知らせてあげたそうです。そしてこのお地蔵様をそんな参詣者のために建てます。あとちょっとで本宮なのにきっと無念だったろう…それを思う気持ちを想像すると涙が出そうです。

 

13:00 巨大松茸!!

ちょっと急なアスファルトを登りきると、『いろり庵』という民宿があります。玄関先の大きな椎茸?と思ったら、なんとまあ立派な松茸です!大きいだけじゃなく、めちゃくちゃいい匂い!ふわ~っと香しくて脳内になんかいい物質がドバドバ出るのがわかりました。松茸セラピーって感じです。

この季節に宿泊すると松茸ごはんが出るそうです。と…泊まりたい…!!

 

13:35 野中の清水

日本百名水で、東京タワーにサンプルが飾られたこともある和歌山代表選手です。ベテラン参加者が「空のペットボトルがあるといいよ」とお茶を飲み干しながら教えてくれたので、私も真似してちゃっかり名水テイクアウト

家で紅茶にしました。いつもより美味しい…かな?!という気がしましたよ。だってそんな味覚繊細じゃないですし~。まあ楽しかったお土産ですね。その場で汲んだ水の方がキリっと冷たくて、せせらぎと山の空気で格別ですよ。

13:50 継桜王子社 野中の一方杉

南方熊楠が合祀から守った一方杉の巨木が立ち並びます。大人6人でぐるっと一周。しかし高い木というのは雷が落ちやすくて、黒く樹液が出てるのかと思いきや焦げているんだそうです。それでもすくっと伸びる大木、かっこいい~。

階段の中腹にある杉には人が入ることのできる穴が開いていて、みんなで入ってみました。一度に10人くらいは入れたかな?で、中に入って携帯のライトで照らしてみるとウマオイ(コオロギみたいなの)と、そして黄色くモコモコしたものが…。は、これは熊楠が研究していた粘菌(変形菌)だ!!

偉大な学者が守った神社です。そこに生命が息づいていることに、なんだか感動しました。

熊楠先生 見てますか?

アサギマダラのボーナスタイム

神社の一番上で、多屋さんがお話を終えたころ3羽のアサギマダラがふわり、ふわりと舞います。「あ、またアサギマダラだ」と目で追うと、参加者のおひとりのTシャツに1羽のアサギマダラが!止まった!しかもなかなか逃げないので写真とりまくりです。黄色の洋服なので青い羽根がまた映える。この蝶々わかってらっしゃるわ~。

飛びたち、また止まり。すごいすごいとはしゃいでいると、次は私の顔面へ…え!??と思ったら鼻の頭に着地しました。カメラを出そうとすると飛んでしまったのですが、今度はアゴに止まりました。しばらくそうしてくれていたので(ちょっとかゆい)写真も撮れましたよ。その後は友人の手で過ごして、また別の方の帽子でゆっくりして…。

蝶が人に止まるなんてそうないこと。しかもめったに見られないアサギマダラです。多屋さん本当に驚いていました。世界遺産になってから15年間でアサギマダラが出たのも初めてなら、何羽も、それもこんなに戯れてくれるなんて。

今年は本宮大社御創建2050年のプレミアムイヤーですから、蝶もお参りにきたのでしょうか。私はここで待機していた安江会長を見つけたので、とりあえずドヤ顔で自慢をしました。

14:15 とがの木茶屋 秀衡桜

とがの木茶屋は熊野古道、中辺路の代表的な景観のひとつですね。ここでは語り部の会の皆さんが、飲み物を用意してくれていました。はちみつレモンが手作りって感じでうれしい~。酸っぱくって最高においしい~。

奥州秀衡が赤子の無事を願い、ここに残した杖が桜の木として根付いたという伝説。美しい桜の大木があり、毎年人々を楽しませてくれていたのですが、数年前の秋祭りの前に倒れたのだそうです。

ここでは獅子舞もやるんです。お祭りの日だったらけが人が出たでしょう。ちょうどその2日前に、継桜は静かに倒れたんです。」と、悲しそうに多屋さんが言います。その言葉にはっ!としました。老樹に心があったのでしょうか? たまたまだったんじゃなくて?

『桜の最期にはきっと意味がある』そう考える人がいる。

この発想は熊野古道の起源を理解する上で大切な要素かもしれないのです。ご神体の大岩、大滝、大樹…。八百万の神と、仏教とが混然一体となり紀伊半島の霊場が生まれました。神社があるからお参りに行く、お墓があるから手を合わす、その作法を私たちは当たり前に知っています。親や、先人に教わって。

でも信仰の始まりとは誰かに教わるものではなく、自然に、こんな風に生まれたのかもしれない…昇る太陽を見て歓喜し、降る雨に怯え、輝く月を崇め、畏れて、感謝して。とても尊いものを見たような気がしました。

14:30 渡瀬家の墓 安倍晴明の腰かけ石

あとちょっとでゴールなんですが、なぜかここでサポーターで加わっていたもう1人の語り部さんにバトンタッチ!この方、実は2年前に大雲取越えをご一緒させていただいたことがある語り部の玉置さ~ん!♡です。今回の思わぬ再会に友人と大喜びしました。

学生時代からずっと趣味で登山をやってきた方で、かなり山のことに詳しい。鳥を捕まえた話とか、植物、読図、沢の源流、行動食の摂り方、歩き方など登山の奥深さを教えてくれました。スマートで控えめに見えますが中辺路の語り部で一番健脚だそう。面白い方です。

ふふふ、そして私は見逃しませんでしたよ…玉置さんが落ちているゴミをそっと拾っているのを!

14:45 中川王子跡

…で、「えーとここはあまり、面白い話はないんです」と開口一番。ええ!と思ったけど最初の語り部さんも横で「そうね」と言ってます。藤原宗忠が通った記録はあるようですが、あまり文献がないそうです。この上を登ったところに紀州藩が建てた緑泥片岩の石碑があるだけだそうです。

14:53 お地蔵様 ナンバンキセル

「ここに蛇が住んでるって言う方もあります~」と話す玉置さん。皆まじまじと眺めているのですが、玉置さんがふざけてパッとそこを覗くので一瞬ギョッとしました。ヘビはおらず振り返って笑う玉置さん。いたずらっ子か!

少し歩くとススキがたくさん生えていて、見たことのない花がありました。ナンバンキセルという寄生植物で、ススキから養分をもらって生きているんだと多屋さんが教えてくれます。不思議な生態やな~。

15:20 小広王子でゴール!

何もないアスファルトを歩きます。アスファルトってしんどいわ。「みんな歩くのけっこう早い~」と音を上げ始めた友人と、その背中を押すもう1人の友人。今日は朝から遅刻してくれるしグダグダやし…でも仲良し。そんな1枚です。みんなで歩くと楽しいね。

まぁ…朝は「二度と誘わぬ!」と不動明王の形相でわたしは怒ってたけどね。しゃあねぇな。

さて、楽しい時間もここまでです。ついにこの日のゴール地点に到着しました。嬉しいような名残惜しいような…。次回は難所ですね。小広からは1回だけしか歩いてないから、かなり楽しみ!またきっとお会いしましょう。

送迎車に分乗してちかつゆの道の駅まで戻ります。311号線の両側に広がるススキは夕陽の逆光で感激の美しさ!まるで車窓からキラキラと見送ってくれるよう。「何年もセイタカアワダチソウと戦争してたんだよ、ついにススキが勝ったね~」と会長安江さん。お香のいい匂いの車内でたったの数分間、2度とないだろう奇跡に満ちた5時間半を心に焼き付けたのでした。

 

 

 

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