大笑いのロイヤルロード|④今年も歩こう熊野古道(小広王子~発心門王子)

第4回 今年も歩こう熊野古道に参加しました。

今回は中辺路の中でも難所といわれ、3つもの峠越えが待ち構えるワクワクのコース。(え、わくわくしませんか?)ここは2年前に会長の安江さんと歩いた以来2回目だったのでとても楽しみに参加しました。

体力のいるコースなので参加者は少なめですが、10名ほどの班に語り部2人がつく豪華な内容(一般ツアーなら20~30人に1人)。携帯の電波が届かない場所もあり、応援車両が要所で待機。トランシーバー常備。さすが主催が語り部の会だと安心だなーと思いましたよ。

そんな険しいコースですが楽しい語り部さんのおかげで、1人参加なのにめちゃくちゃ笑いました。みなさん素敵な方ばかり。

さぁロイヤルロードが始まります!

第4回 今年も歩こう熊野古道

  • 開催日 2018.11.18(日)晴れ
  • 参加費 2,000円(保険、弁当、お茶つき)
  • コース 中辺路(小広王子~発心門 約12km)
  • 集合  9:30 小広王子口バス停

歩行記録

▲小広王子跡〜発心門王子口バス停

9:30 集合

 

今回の集合は「小広王子口バス停」です。バスに乗ってここまでくるか、ここに車を停めるかですが『ここが駐車場!』って感じではありません。バスの邪魔にならないよう空き地(砂利)に駐車するのですが、すでにそこはいっぱいだったので手前(田辺市側から向かって)の空き地に車を停めました。草ボーボーでなかなか素敵なところです。高級車の方はご注意ください。

ここから10分ほど坂道を登って、前回解散した小広王子跡まで向かいます。そこが今日のスタート地です。

 

9:50 出発

 

今回は会長の安江さんが別の仕事でいないので、語り部の玉置さんが指揮をとってご挨拶。私のA班は声が大きくて明るい山中さん、そしてサポーターは前回とても丁寧で素敵なガイドをしてくださった多屋さんです。

地下足袋の語り部さん、自身の名前が書いた紙を見せる語り部さん、他の方々も個性的で、またいつかお話したいなと思う方ばかりでした。

A班の山中さん指導で全員で準備体操。絶妙にボケを入れてくれるので出発前から笑みがこぼれます。これはきっと楽しいなという予感です。

「A班行きますよ~!」と元気よく山中さんが歩きはじめました。「待ってください山中さん、1人多いです!」と多屋さん。「うん?9人やろ」「A班は9人ですが10人います。」「…?? まぁええやろ!」「ダメです、点呼させてください!」というやりとりで大笑い。そりゃあかん。1人多くても大丈夫という意味らしいですが、山中さんの大らかな雰囲気ならちょっとしたトラブルも明るく越えられそうです。(実際A班に1人移りました)

10:00 トイレ

出発すぐ急な坂道を下ってトイレです。ここで行かないと2時間ありません。

 

10:10 子安地蔵 熊瀬川王子跡

「子供が熱を出したとき、ここのお地蔵様にお願いすると39度の熱が37度になりまーす!」と力強く解説。平熱にはならんのか…笑

生臭い物が苦手なお地蔵様です。魚の臭いの移った半紙でお供えをして、逆に熱が上がったという言い伝えがあります。

5分歩くと熊瀬川王子跡。太陽の光が山中さんを照らし、あんまり眩しい写真が撮れたのが1人おかしくて内容あんまり覚えてないです。すみません。解説板には藤原頼宣、頼資ともにここで昼食を取ったと書いてあります。しかし実際ここに王子があったのかは定かではないようです。

10:30 草鞋(わらじ)峠

最初の峠です。熊野古道らしい山道をよいしょよいしょと登ります。この峠でわらじを履き替え、その脱いだものが塚のように山盛りになっていたことからその名がついたそうです。

山中さんがリュックから草鞋を取り出しました。「最近は草鞋も知らん人おるんやよ~」と見せてくれます。写真とかで良い気がしますが、わざわざ見せるために実物を持ってくるなんて…(絶対めっちゃジャマやろ!)でもこれが印象に残るんですよね、もしや計算しつくされた演出なのかも?

草鞋峠の下りは石畳、ここを『女坂』と呼びます。下った先は岩上峠へ登る『男坂』…のはずなのですが、地滑りの危険があり迂回路となります。男坂と女坂の間には『仲人茶屋』という休憩所があったそうで、それを聞いた若き日の皇太子さまは大変興味を持たれたそうです。実はその時、雅子様とのご婚礼がすでに決まっていたんだとか。まぎれもない、ここは平成のロイヤルロードです。

女坂の足元をよーく見て歩きましょう。大きな石はしっかりして見えますが浅く埋められているんだそうです。で、小さな石は深く杭を打つように埋められているそう。小さな石が、長い年月を経てもストッパーになってるとのこと。昔の人は本当にかしこいなぁ。それぞれ大葉小葉と呼ばれます。

11:00 2011年の迂回路

2011年の激甚災害、台風で紀伊半島はボロボロになりました。今なお爪痕は残り、この迂回路もそれから7年ずっとこのままです。というか今後もこのままかもしれません。本当のルートは深層崩壊の亀裂が100Mに渡って入り、いつ崩れてもおかしくない状況なのです。

そしてあくまで迂回路なので、番号道標がありません。約4㎞ですが距離感や現在地がつかみにくくなりますので注意が必要です。またここはバス停に向かうことのできるリタイアポイント。ここからさらに険しくなります。体調が悪ければ途中でやめるのは賢明な判断です。

熊野古道は歴史とともに絶えず変わってきました。こっちは平安の道、あっちは近世の道…というように1本ではありません。歴史の道だから歩きたい!と思うのは今の時代のブームメントであって、難行苦行して辿りつく『熊野』を目指した『道』はきっと無数にあったでしょう。世界遺産だけが熊野古道ではありません。

ドイツ人カップルが残念そうに迂回路の看板を見て先を行きました。でもいつかは今も過去になる、私たちも1匹の蟻であり歴史の登場人物。新たな時代を歩いているのだ!とせっかくなのでおもいましょう。

11:25 三越峠 まだ途中

いよいよ電波も入らない山を歩きます。少し見晴らしのいいところで、今歩いてきた草鞋峠があそこですよと教えてくれます。爽快です。でも多屋さんによるとここは夏が本当にきついんだそうです。山間なので風もなく、背中を照りつける太陽で相当厳しいんだとか。

そんな険しい道の途中で、山中さんは水森かおりさんの演歌『熊野古道』の歌詞を読み上げます。「つまずきながらもまた一歩 熊野古道を峠越え 歩き通したその時が きっと私のひとり立ち」そんな道が続きますよ~!って言ったあとは、和歌山出身である坂本冬美さんの話へ。語り部山中さんは冬美さんと同じ上富田町の出身です。

ごそごそリュックから何かを取り出しました。なんてこった…冬美さんの新曲の入ったCDだ!!私おもしろすぎて死にそうでした。だって標高540mでCDだけあっても仕方ないでしょ。何で持ってきたの…。「4曲入りで1,500円!買ってくださーい!」三越峠に、語り部の声がこだまします。山中さん最高です。

ふるさとの空へ

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▲熊野古道や、ふるさと和歌山をテーマにした4曲入りです

11:50 三越峠 頂上

山の頂上ではないですが、峠はここまでです。尾根風が吹いて、ああ登りきったと実感します。

ここからの下りの傾斜がかなり急で、砂利に足を持って行かれそうになる。集中して歩く必要がありますが「時々はみてくださいね、今日は木漏れ日がきれいですよ!」とおっしゃいます。確かに峠を越えると日の当たり具合も変わり、景色が違います。うーん気持ちがいいなぁ。

12:25 仮設トイレ

今年の台風の爪痕を眺めて歩いていくと、仮設トイレが現れます。

沢の水を引いているので水洗です。黄色のタンクで手も洗えます。(足元のレバーをしっかり踏まないと流れないみたいですが、ペットボトルで汲んだ水でも流せました)

帰って友人に写真見せたらこのタンク、こけしやん!って笑うんです。こけしにしてはちょっと人相悪くない?!

 

12:45 蛇形(じゃがた)地蔵

スタンプポイントです。見るべきはお地蔵さんの裏側にある石板。山中さんがライトで照らして「ここがヘビの頭~」と説明してくださいます。これは実は海藻の化石なんだそう。こんな山にどうして海藻が?ここが海底だったということでしょうか。

今回は迂回路で歩けませんでしたが、岩上峠付近で倒れる旅人がとても多かったそう。そんな遭難を防ぐためにお地蔵様が建てられたそうです。この化石が地球エネルギーの証拠、不思議なものである、そう昔の人はわかったのでしょうか?とても不思議です。

ちなみに喘息にすごくご利益があるそうで、全国に信者がいるとのことです。

 

13:00 湯川一族の集落跡、湯川王子

この前日に歩いた御坊市(紀伊路)には湯川という地名がありました。日高平野を中心に繁栄した豪族湯川家の発祥がここです。ノーベル賞を受賞した湯川秀樹さん、この方は奥様の湯川家の婿養子となりその姓となりました。なのでその血が流れているわけではありませんが…ご縁があることには間違いないですからね!

少し行くと王子があります。湯川集落の方が守ってきたであろうこの王子社は五体王子に次いで格式が高いそうです。皇太子行啓の文字。天皇なら御幸、皇太子は行啓というそうです。へー。

13:30 お昼休憩!

予め、休憩は遅い時間ですよと言われてたのでチョコ食べながら歩きましたがお腹すいたー!NHKの撮影班がちょうど来ていて、写真OKもらいましたがいつなんの放送かはまだ正式発表じゃないそうで書けません…ぐぬぬ言いたい。ちなみに山中さんこの撮影に関わってらっしゃいます。←どうしても言い漏らしたい

昼食は大好きな大村屋さんの熊野古道弁当!わーい!!ここに来るまでに「今日はどこのお弁当ですか?!」って聞いたんです。大村屋さんやで♪と多屋さんに教えてもらってテンションアップ。次回2月は三栖、五郎庵さんの精進料理だそうです。五郎庵さんは私個人的に大変親切にしてもらったことがあり、話題に出たついでに他の参加者におすすめしまくりました。(※そうでなくても美味しくて大人気です)ええとこ選んでくれるわーさすがやわー。

食後はタッパに入った手作りのはちみつレモン、毎回用意してくれてるのめっちゃ嬉しい。

14:00 再出発

「A班集合~!A班~~!」と山中さんが向こうの方で、一際大きな声で呼びかけます。十分聞こえるので皆ぞろぞろと集まるのに「ピィーーーーー!!!」っとホイッスルまで鳴らすから、A班以外も注目!小学生か牧場の動物みたいな気分で、笑いながら再出発しました。

ここには関所跡と書いてますが、本格的な関所というより通行料を取ってたみたい。300円くらいと言ってました。あと本宮が田辺市に合併されるまでは西牟婁と東牟婁の境界だったそうです。

14:20 音無滝

数日の好天続きで滝こそ小さなものでしたが、ここが音無川の水源。もちろん周りから流れてくる沢の流れもあると思いますが、ここでは水が湧いているとのこと。音無川は、熊野本宮大社があった大斎原に流れる神聖な川の一つです。

14:35 道の川集落、奇跡の楠

昭和48年まで集落があった場所です。開けた場所だったはずですが、住民がここを出るときに植えた杉が成長して伸びていて、大体樹齢50年くらいであることがわかります。石垣、南天、茶の木があるとかつて集落があった跡だと、いつか語り部の安江さんに教えてもらったことを思い出しました。

この先を抜けると、巨大な崩落の跡です。2011年の水害で大規模崩壊を起こしたのですが、楠が1本だけ残ったそうです。うん?どこかで聞いたことのあるような話…ですがけしてパクリではありません。事実です。山が削れている、どんな勢いでどんな轟音であったろうと想像します。

多屋さんが、「でもこの下には、集落はなかったんです。道の川集落の人はどこが危険かわかっていたんでしょうね」とおっしゃいました。

14:50 2018年の迂回路

 

2年前に歩いた道ですが、今年の台風で歩けなくなりました。ここから林道を歩いて発心門へ向かいます。

 

15:25 ちょっと休憩

ここから龍神へ向かう道があるそうですが、軽自動車でないと難しいような道だそうです。皆さん健脚ですがけっこう歩いてきたので疲れました。ゴールまであとちょっとですが立ち止まって小休憩。

さて山中さん今度は何を取り出したのかと思うと「こむら返りする人―!」と漢方薬の紹介です。「回し者ではありませーん!」サービス精神がすごい。

15:45 発心門王子 ゴール

五体王子のラスト、発心門(ほっしんもん)王子です。本来はこっちから登ってくるんだと、写真スポットの紹介つきで紹介してくれます。『発心』は山岳信仰の言葉で、仏門に入ることを決心すること。もうあと7kmも歩けは本宮大社なのです。かつてここには大きな門、ではなく大鳥居があったそうです。

尼寺があったり、定家が詠んだ歌であったり・・・歴史の色濃く残る場所です。

 

16:00 発心門王子口バス停

発心門王子近くまで路線バスが進入していましたが、2018年4月から少し歩いたトイレ近くにバス停が移動されました

途中で出会ったアメリカ人男性が寝転んで休んでいたので、参加者の男性と私の3人でカタコト英語のコミュニケーション。普天間基地で仕事をしてるマリーンソルジャーの彼は、昨夜ちかつゆでキャンプをして朝食をカフェ熊野野菜で食べて歩いてきたそう。今日は湯ノ峯の伊勢やに泊まって、明日本宮大社と温泉を楽しんでもう1泊。体を休めて次は大雲・小雲を超えて那智に行くんだとか。そして電車で伊勢神宮だそうです。

このルートで歩く外国人が今本当に多い。紀伊半島を包括して楽しんでいる。熊野古道は美しいし、人々もナイスって言ってました。嬉しいなぁ。

中辺路はどんどんグローバル化していて、語り部の玉置さんが最近通訳付きでガイドしたのはイスラエルの方だったそう。男女とも兵役があり長期休暇があること、文化レベルが高くて歴史に関心があるそうです。私も先日はじめてイスラエルの人に出会ったのでヘブライ語のこんにちは「シャローム…?」と言ってみました。「シャロー…マッ」と笑顔で発音を教えてくれました。ムはンマッという感じだそうです。

異文化交流もできる中辺路、とても楽しいですよ。

16:28 バス乗車

龍神バスに乗って小広口バス停まで戻ります。バス代1,120円!高いよー!!車なら20分くらいですが路線バスは川湯や湯の峯温泉を経由するので1時間かかります。うとうととして、小広口バス停に着いたのはすっかり暗くなったころ。みなさんとお別れして次の参加も胸に誓いました。