はじめての熊野古道、あなたはどっちのタイプ?
「熊野古道に行きたいんですけど…」
いいですね、さぁ、どこに行きましょうか?
熊野古道はバリエーション豊富。その人が行きたいのはどんなところなのか、それがとっても大切です。あなた自身が持つイメージ、体力を知らなければおすすめができません。
はじめての熊野古道えらびは2つのタイプに大別されます。あなたはどっちのタイプでしょうか?
①熊野古道をちょっと歩いてみたい!旅行に盛り込みたい! →A.観光タイプ
②憧れの熊野古道をマジでやりたい!たっぷり歩きたい! →B.ウォーカータイプ
それぞれのおすすめのコースは後述しますが、いずれにしても最初は中辺路がおすすめです。観光ガイドの熊野古道もほとんど載ってるのは中辺路。大門坂コースも発心門コースもその一部。
なぜでしょうか?
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初めてなら中辺路、のワケ
情報量が多いこと
旅行サイトや観光ガイドには、見どころが多い!パワースポット!神社!滝!カフェ!と楽しそうな情報がもりだくさんですね。ただ、私が実際に中辺路以外も歩いて感じた最も初心者向けだと思う点は「情報量の多さ」です。見どころもパワースポットもグルメも、他の熊野古道にだってたくさんあります。圧倒的に中辺路が突出しているのは情報です。
主要交通機関は路線バスです。JR紀伊田辺駅から熊野本宮大社・新宮に向けて運行されているバスは、本数が少なく都市部とは違い安くありません。
それにほとんどが山村です。かわいいカフェもインスタ映えする郷土料理も、個人経営です。閉店が早かったり売り切れていたりということは日常茶飯事。つまり観光客は多いけど、田舎ならではの「不便さ」があるのです。
ですがこういったマイナスの情報は、あらかじめ調べられます。各公式サイトはもちろん、実際に歩いた人のブログや歩行記録を検索すればたくさん出てきます。中辺路がポピュラーであることの利点です。
よく整備されていて迷わない
B.ウォーカータイプの人とって、道に迷わないかというのは大きな不安ですが全く問題ありません。県のページでもダウンロードできる地図、そして道しるべをちゃんと見ていればゴールできます。中辺路以外はわかりにくい箇所があったりしますし情報も少ないです。外国人でも一人で歩いているくらい安全です。
とても親切なのが、500mごとの番号道しるべ。どれくらい歩いたか、現在地はどこか、自分が間違わずルート上にいるのかが確認できます。これは災害や救急時の連絡にも活躍しています。
熊野三山のすべてが中辺路に通じる
もっとも位が高いとされる本宮大社、大滝と大門坂が人気の那智大社、縁結びと朱塗りの美しい速玉大社。この3つを熊野三山(山は神のいる場所の意味)とよび、これこそが人々が目指した熊野古道のゴール。
熊野古道を歩くならその3つに通じる道を歩きたいと思うでしょう。その3つを中辺路は網羅しています。伊勢路(三重県側)から速玉・那智もおすすめですが、3つとも…となるとやはり中辺路に結局なります。また、そのために世界遺産登録の箇所も多くなります。
語り部ガイドツアーがある
単独で歩くのはもちろん、初心者におすすめなのは語り部とのウォークです。個人で専属ガイドを手配するのがベストですが、手頃なスポットでのガイドツアーが中辺路は充実しています。参加費が1000円~2000円程度と安いのですが、一般団体と同じように案内してくれます。語り部は地域愛にあふれた方ばかりです。安全であることはもちろん、例え内容が難しくで理解できなくても一緒に歩くだけで元気がもらえます。ガイドがあるとないでは大違いです。
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タイプ別おすすめコース
さて、それでは2タイプのおすすめを紹介しましょう!
A.観光タイプ
ガイドブックに載ってるカフェにも行きたいし、アドベンチャーワールドも行きたい、勝浦のマグロも食べたい…と欲張りなあなたへ。管理人セレクトの中辺路コースが以下の5コースです。
ただしこの5つはハイライトなので、ここだけで「熊野古道を歩いた!」と胸を張るのはニワカ感いっぱい。和歌山に旅行にいって「ちょっと理解を深めてきた」と控えめに言った方が知的ですね。
1.熊野本宮大社へゴール! (発心門~本宮大社 約7km/3~4時間)
熊野三山でも一番位が高いとされる本宮の手前7kmから歩くコースです。坂道はありますが比較的なだらかで、スニーカーであれば本格的な登山靴でなくても歩けます。もっとも個人での歩行者が多く、ガイドブックにも必ず掲載されるコースです。
日祝の限定で開催される、朝いち語り部が参加費1,000円(バス代別途要)でおすすめです。
2.那智大社へゴール!(大門坂~那智大社~那智の滝 約2km/2~3時間)
日本一の名瀑、那智の滝は圧巻です。そのご神体の大迫力を感じたいならこのコース。こちらもスニーカーでOKです。熊野古道のイメージ写真によく使われるのがここ大門坂の石畳。いかにも熊野古道、見事です。
こちらもガイド付き那智山周遊サンデーウォークという語り部ツアーがあり参加費は1,000円。ぜひ計画してみてください。
3.速玉大社&神倉神社へゴール!
新宮の街にある、速玉大社とその祖となった神倉神社へは熊野古道のイメージはあまりないかもしれません。ここを訪れるなら併せて新宮のグルメ、文化にふれる観光を盛り込むのがおすすめです。
一番のおすすめポイントは語り部ガイドツアーが毎日あることです。(事前予約要)速玉も神倉もたっぷり語り部さんからお話をきくと本当におもしろく熊野古道が理解できます。“熊野古道歩き”ではないですが、熊野古道を知るには新宮の企画がイチオシです。
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4.歩かないけど熊野古道?!世界遺産“熊野川の川舟下り”
本宮大社から速玉大社へ、平安の貴族たちが向かった手段がこの川舟。そしてこの熊野川は「川の道」として世界遺産の認定を受けているれっきとした熊野古道なのです。舟には語り部が乗船し、自然の景観も歴史も案内してくれます。歩かなくても熊野古道が体験できるので観光をメインに考えている人にはとてもおすすめです。
料金は大人3,900円。自家用車の場合は下船後に送迎があり。
5.カフェも楽しめるガイドなしの、ちかつゆコース(60分、90分、180分の3コース)
田辺から本宮へ東に向かう中辺路のちょうどまんなか辺りが、近露地域です。ここのおすすめは「道の駅 古道歩きの里ちかつゆ」の古道歩き体験プラン。ガイドなしですがなんとワンコイン500円で参加でき、実施時間も多くて便利。しかも予約不要です。
ちゃんと歩けるようMAPをくれ、DVDの解説映像を上映してくれます。そしてウォークスタート地までの送迎があるのです。アスファルトの道がほとんどですが、とにかく手軽に熊野古道が体験できます。
そして途中にいくつかのカフェがあるのもポイント。立ち寄る場合は時間がプラスされるので予め受付で相談しましょう。
B.ウォーカータイプ
熊野古道をちゃんとやってみたい、人生を変えたい、なぜだかすごく気になっている…そんな熊野ホリック予備軍なあなたへ。滝尻の洗礼、思い切って受けてみませんか?
1. 上級/ 滝尻~本宮大社(約38km) 1泊または2泊で一気に歩く
以下のリンクは1泊2日のモデルコースですが、2泊3日の方が観光もふくめたっぷり楽しめるのでおすすめです。というか1泊で38kmをやるのはかなり健脚でないと難しい…そして帰る先にもよりますが、アクセス的にもう1泊は必要だと思います。
今このコースを歩いているのは欧米の観光客が中心で、歩くペースが似ていると同じ旅人と道中一緒になります。皆いい顔をして楽しく歩いています。恥ずかしがらずに声をかけましょう、世界の人と交流が楽しめるのも現代中辺路の魅力です。宿泊は歴史ある旅館、民宿、ゲストハウス、民泊と多彩な選択肢があります。若い世代の方が起業していたりして、けっこうおしゃれです。
またこの泊りがけのコースは荷物が多くなります。事前に宿泊先に送るのももちろんですが、当日搬送のサービスが充実しているのも中辺路ならではです。
2. 初級~中級/ 滝尻~本宮大社(約38km) 分割踏破 計画
和歌山在住の私が取り組んだのがこのパターンです。今月は滝尻から、来月はその続き…。このパターンのいいところは、何度も繰り返し訪れるのでアクセス・周辺情報・熊野古道の知識などが定着しやすいところです。よくわからなかったマニアックな地名も「あーはいはい、あそこね」と下手すると周辺地域の人より詳しくなります。(和歌山県民はあまり歩いてないので本当にそうなります)
そんなの地元の人しかできないじゃん!と思うかもしれませんが、かなり遠方からも繰り返し訪れる方はいます。
体力のある方は新宿・横浜からの夜行バスが片道8,200円からなのでおすすめです。もちろん利便性とお値段は羽田-南紀白浜のJALが一番(南紀白浜空港)。JRは新大阪から紀伊田辺まで2.5時間と結構かかります。関西圏からは梅田・なんばからの高速バスが片道2,880円と安くて便利です。
3.上級/ 那智大社~本宮大社(約) 大雲・小雲取越え
登山が好きで足に自信のある方、あるいは滝尻~本宮を完歩した方。そんな方におすすめなのが一層険しいこのコース。このコースは本宮へたどり着いたあとの続きです。中辺路ロード第2章と言ったところでしょうか。(何章まであるんや…)
本宮・速玉・那智と、無事に三社参りをした平安の上皇たち。やれやれこれで目的は達成した…のではありません。帰るまでが遠足とはよく言ったもの。那智大社から本宮へ山深い道を歩いて戻る、それが大雲と小雲です。この2つは連続していますが、どちらも距離があるので1日がかりです。別々の日にやるか、その中間の小口で1泊2日でやるかどちらかです。
中辺路で一番の難所と呼ばれる大雲取越えがやれたら、我こそは熊野古道ウォーカーと言っても過言ではないでしょう。