夏と言えば…ホラー!?
夏と言えばホラー!そして熊野古道と言えば…ホラー?!
…とか言いながら小口で暮らして数週間、付き合いたてバカップルで運営しているゲストハウスなのでオカルトな感じはゼロ。
近所の人がイノシシ肉くれたり、自然の家でビールもらったり、ずいぶん恵まれた日々です。
小口自然の家に挨拶がてらあそびに寄ったら、まぁ飲んで行けよとビールをくれた朝10時!!😆
ビアガーデン準備中らしいです🍺✨ pic.twitter.com/ZgK0meL7zv
— 熊野ログ|小口の雲間ロッジで住込みホスト (@kumanolog) 2019年6月29日
本宮のキーパーソン高栖さんがサザエと流れ子持ってきてくれたーー!!💖 pic.twitter.com/23biSWRiev
— 熊野ログ|小口の雲間ロッジで住込みホスト (@kumanolog) 2019年6月27日
ご近所さんが猪肉をくれた小口ライフ。
雨でぜんぜん近所出歩かず、付き合いもできてないのにありがたいです! pic.twitter.com/6YXvRqSIQT— 熊野ログ|小口の雲間ロッジで住込みホスト (@kumanolog) 2019年7月10日
でもパートナーの山田さんが出かけていないノーゲストの夜は、山間の集落ですから静かなもの。
「ちゃんと戸締りして寝るんだよ、物騒なところだから。」
それは窓を全開にしてたって泥棒やお化けなんて出ないと言うジョーク。(ちなみに戸締りしてても虫は侵入してくるゾ!)
ド田舎育ちの坂本は、暗闇が怖いとか山が深いとか、今さら珍しいことはありません。
ですが熊野参詣者を毎日眺め、「裏那智」の異名を持つ名瀑をたずね、ご近所に住む山伏に周辺を案内してもらったり…
ただの田舎ではない日常が混在しています。
落差51mの宝竜滝!
連日の雨でスゴイ迫力でした。 pic.twitter.com/lf85bFQSpn— 熊野ログ|小口の雲間ロッジで住込みホスト (@kumanolog) 2019年7月12日
そんなわけでなんとな~く…。
この大自然に「神」や「妖怪」を見出した、いにしえの人の心がわかってきたような気がする今日この頃。(えっ説得力に欠けますか?)
これは理解というより共鳴かもしれません。
大雲・小雲取越えに渦巻くのは中辺路ルートでも特に濃い何か。ちょっと不気味で、オカルト好きならドキドキする異世界です。
小口はそんなルートの狭間に位置する人間界。いやーいいところですよー。
熊野古道は「スピリチュアル」「パワースポット」「よみがえり」「神秘」なんて、キラキラした印象のポジティブワードで表されることが多いですよね。
でもよくよく知ると、その根底にあるものって「死出の旅路」「黄泉の国」「浄土」と言われるようなオカルトでホラーな世界なのです。
「アンダーグラウンド」「ダーク」「オカルト」「ディープ」…そこがまた熊野の魅力です。
大雲取越え・小雲取り越えに残る言い伝え
今、私たちが滞在している小口というところは、大雲取りと小雲取りという2つの山越えの谷間にあります。
「雲を取る(つかむ)がごとく」と言われた険し〜い山道ですが、実際は1,000m級の低山なので日本アルプスなどの高山帯に比べるとさほど厳しい山岳ではないはずです。
「確かに険しいけど…雲取越えなんてえらい大げさやなぁ」と思ってたこともあります。(はい、初挑戦は死にそうでした)
でもこれは、道が険しいというだけではないのです。雲取越えは中辺路の中でも異世界の雰囲気と言い伝えが多く残る場所。
せっかくこのルートに足を踏み入れるなら、そんな伝承を知ってどうして「雲取越え」なんて呼ばれたのか、想像してみてくださいね。
亡者の出会い
大雲・小雲は熊野古道の中でも「死出の旅路」と呼ばれます。この道中で旅人はときに亡くなった肉親や知人に会うと言われました。
小口周辺の清流、和田川や赤木川から湯気が立ち上り霧に包まれる様子は、まるで三途の河を想起させるようだなと感じました。
妖怪「ダル」「ひとつだたら」
山で飢えて死んだ人たちが妖怪ダルになって旅人に取り憑くと言われます。
南方熊楠も対策に米粒を一つ残して那智の山を歩きました。低血糖説とも言われますが、大台ケ原ではガス中毒の説もあるみたいです。→■だるに憑かれる|み熊野ねっと
ひとつだたら(いっぽんたたら)は、一つ目と一本足の妖怪。小口の道標がこの妖怪で、ちょっとほっこりしますがそんな良い妖怪でもありません。
ひとつだたらだー!
と一目でわかるアナタは玄人。
熊野の妖怪です! pic.twitter.com/HVg4pKpLbb— 熊野ログ|小口の雲間ロッジで住込みホスト (@kumanolog) 2019年6月29日
もののけ姫の「たたら場」と関係あるのかな?と思ったら、製鉄はふいごを片足で踏み、高温の火を見つめるので足も目も痛めやすかったからだそうです。
賽の河原地蔵
亡くなった参詣者を弔うためのお地蔵様です。こういったお地蔵様は他の熊野古道でもみられるのですが、賽の河原と呼ばれるのはおそらくここだけでしょう。
妙法山阿弥陀寺
那智山の奥にある妙法山阿弥陀。ひとりでに鐘が鳴るなど多くの伝承があります。
日本最初の焼身往生を成した場所もあり、諸仏を供養するためとは言えかなりショッキングです。黄泉の国の入り口と呼ばれたのは思想だけでなかった、実際に命を賭した人がいるのです。
補陀落渡海
大雲小雲を越えてた那智山の先は海。
その海の向こうに極楽浄土があると信じ、何人もの仏僧が生きたまま出口のない船に閉じ込もり旅立ちました。
焼身往生と同じく自らの命を捧げたのです。那智駅にほど近い補陀落山寺にはその船のレプリカがあります。
神仏習合を表す鳥居に囲まれた舟、熊野信仰の究極の世界観を垣間見ることができます。
大峯奥駆道
大雲・小雲取越えは「中辺路」ルートですが、山伏修験の「奥駆道」の一部でもあります。
奈良の霊場吉野と那智を結ぶその道は、山岳、自然信仰がバックグラウンドにある厳しい修行のための道です。
そのため道中のお地蔵様などには勤行の跡を見ることができ、これは雲取越えの特色です。吉野、本宮、那智が霊場をつなぐ道であることがはっきりと表れます。
生と死、光と影が見える世界
じゃぁ熊野古道ってそんなに怖いか、というとそんなことはありませんよ。
「よみがえり」は熊野古道の一つのキーワードで、熊野を歩いて人生が変わった人がたくさんいます。
小口はとても静かで川がきれいで良いところだし、ここが気に入って移住した人も多いです。
でも人生を変えたい!というとき、熊野のテーマである再生、蘇生、よみがえりのご利益をいただこうと思うと…一度は死ななきゃいけません。
だから人々は霊場熊野を目指したのです。隠りく(こもりく)と呼ばれた隈(すみ)の地へ。平穏と安寧と極楽浄土を願って。
熊野古道には影があります。木々の中で目に見える影、そして目には見えない陰。大雲・小雲を歩くなら、ぜひそのカゲを感じてください。
きっと自分という存在も、当たり前の日常も、つらい仕事も、逃げ出したい人間関係も…「雲の中」から見ると違って見えます。
何か思い悩む人にこそおすすめのルート。蘇りの道を、ぜひ歩いてみてくださいね。