最大の難所、鹿ヶ瀬峠へ|⑥紀伊路130kmウォーク!(湯浅~紀伊内原)

第6回『語り部と歩く 熊野古道紀伊路130kmウォーク』のイベントに参加しました!

今回は紀伊路の難所『鹿ヶ瀬峠(標高約360m)』を越える健脚向きコース。峠の前後は平坦なアスファルトですがコース全体で17kmと長い!そしてレポート内容も長い…!覚悟ください!

紀伊路って熊野古道の中で不人気ルート…。世界遺産登録は神社などの一部で、道そのものはほとんどアスファルトなので仕方ないのですが。でも史跡も歴史もめちゃくちゃ多い!もっと人気出てもいいはずやのになぁ。

だからこそ何気ない景色にストーリーを見せてくれる、語り部ガイド付きイベントが超おすすめです!

第6回 語り部と歩く 熊野古道紀伊路130kmウォーク

開催日 2018.10.17(水)晴れ時々くもり
参加費 1,000円(資料代、ガイド代、保険代込 ※弁当各自持参)
コース 紀伊路(JR湯浅駅〜JR紀伊内原駅 約17km)
集合  8:55 JR湯浅駅

歩行記録

8:55 JR湯浅駅

▲紀伊路の後半パンフは紫色 H27年1月改訂版

 

醤油発祥の湯浅からスタートです!この企画も後半に突入したので紀伊路の街道マップを新しくいただけました。今回初参加の友人には押印帳くださいました。「中辺路とまた違ってイラストがかわいい」と眺めておりました。

電車で来る方がほとんどですが、車の場合は湯浅駅コインパーキングは現在工事のため利用できません。すぐ近くに別の駐車場がありますが、ご注意ください。

9:20 満願寺

▲満願寺

 

さぁ班ごとにわかれてストレッチ!紀伊路の続きがはじまります。

まず最初に現れるのは高野山真言宗別院 満願寺。このあと10分も歩かないうちに勝楽寺というお寺に着くのですが、この満願寺の奥ノ院だそうです。

9:30 勝楽寺

▲宝物殿
▲紀伊国屋門左衛門の碑

 

満願寺の奥の院。木造で日本最大のお地蔵様がいらっしゃいます。毎年4月24日のみ宝物殿が解放されお目にかかることができるそうです。寺の裏側には湯浅出身の紀伊国屋文左衛門の碑があります。和歌山出身のパナソニック創業者松下幸之助が寄贈したそうです。

9:40 久米崎王子

▲道標は様々なものがあった
▲久米崎王子跡

 

猫ちゃんも気持ちよさげに日光浴している、そんな住宅街を歩いていくと思わぬところに久米崎王子跡が現れます。鎌倉、江戸時代に修復されましたが元の正確な位置などわからないそうです。

10:25 高速道路へ

▲みかん100円!
▲高速道下に熊野古道!おもしろいなー

 

熊野古道の紀伊路は自然が少なくておもしろくない?いいえ、このギャップが最高です。

広川インターチェンジに突入です!もちろん歩行者用の道を歩きますが社会見学気分です。というのも4車線化の工事中で、通行禁止のところがあったり史跡があるとは思えぬ混沌っぷりです。この辺りのルートや標識は整備・変更されるでしょう。それもまた面白いですね。

10:30 津兼(つがね)王子

▲瓦の祠が唯一の史跡だそう

 

語り部さんもややこしいと言ってましたが、ややこしいのは広川インターチェンジではありません。ここの王子跡です。

王子は歴史の中で移動や合祀などでかなり場所も、名前も変わっています。この津兼王子もすぐそばの井関王子と混同されたり移動したりと変遷があったそう。

高速道路の建設で平成に入って今の場所に来たそうです。謎多きこの津兼王子はたぶんインターチェンジから最も近い王子。きっと海南の藤白王子より近いな。高速道路を走る度に思い出しそうです。

10:45 養生場跡と井関村の絵図

▲看板がなければ何でもない住宅街
▲すばらしいと思った。このサイズ感も。

1

お馬さんの養生をしたところです、と書いてなければ民家の敷地かと思います。峠の前後なので、馬を休ませたのでしょう。

江戸末期の図絵、これは見事でした。こんなにたくさんの旅籠があったのかと感心したし、紀伊路の歴史や史跡が街中にあふれている面白さは、中辺路など自然の中にある『THE 熊野古道』が当たり前だと思っていると、逆に新鮮な発見として感じられます。

10:55 丹賀大権現(白井原王子跡)

▲なんかすげー

 

お稲荷さんか~迫力ある~ぅ、と思ったらなんとこれは個人の方が作られたそうです。この地が白井原王子跡になるそうですが『井関王子  津兼王子 合祀』と、うっすら書いてあります。うーん、この3つの王子にいったい何があったのでしょう。

11:05 河瀬(ごのせ)王子

▲写真ではわかりにくいが大岩がある
▲ドクロのスタンプだがこの時はまだ解説なし

 

スタンプポイントです。この王子跡には大きな岩が今も残っています。

で、スタンプは髑髏のイラストでした。なんでかな?と思ったけど特に説明はありません。この髑髏の話はこれから登る鹿ヶ瀬峠で登場します。それにしてもスタンプめっちゃズレてますね、性格が出ます。

11:20 延命地蔵寺 汗かき地蔵(トイレ休憩あり)

▲写真を使って解説

 

延命地蔵寺のお地蔵様は、鹿ヶ瀬峠を登る旅人の背中を、汗をかきながら押してくれるんだそうです。やさしいなぁ日本昔話になりそう。実際にはお目にかかれませんが、実物は漆が溶けて汗をかいてるように見えるんだそうです。

向かいにトイレがあります。新しくきれいですし便座まで温かくびっくりしました。

11:32 東の馬留王子

▲ここは東!峠を越えると西の馬留があります

 

馬を下りて歩きなさい」という場所です。いよいよここからが峠です。かつては道幅もなく険しい登山道だったようです。さようならお馬さん。(馬はどうなんねろ?)

11:36立場跡

▲さっき馬おりたとこやで?!

 

「籠を下りて、馬に乗りなさい」という場所です。え?さっき馬から下りたばかりじゃない?と思ったら時代が違うそうです。この頃には馬も通れる道幅があり、籠から馬に乗り換えたのです。わずかな距離をタイムトラベルしている感じ。

11:40 鹿ヶ瀬峠へ

▲「峠越え、がんばってにゃん」と言っている

 

黒ねこちゃん登場!めっちゃ懐っこくてついて来そうでした。

この辺りからいよいよ登り坂です。この峠は鹿と書きますがししと読みます。日本庭園にある鹿威し(ししおどし)と一緒ですね。鹿の背のような山波だからこの名がついたそう。紀伊路の難所と言われ、周辺には旅籠や茶屋がたくさんあったそうです。いいな~茶屋(カフェ)でいっぷくしたい

 

▲11:50/高度約125m まだまだ元気
▲11:55頃/高度約150m 展望はここだけ

 

登り道は急な傾斜もありますが8割はアスファルトで比較的安全です。(下山は石畳で風情がありますが雨なら滑りそうでした)

▲12:05頃/高度約180m 距離表示わかりやすい
▲12:10/高度約230m けっこうキツイ傾斜

 

さて残念ながらキツイ登りの途中には見るべき史跡がありません。距離表示があるくらいで、とにかくがんばって登るのみ!です。汗かき地蔵様が背中を押してくれると信じて。

私は30代で健脚な方ですがこれは当たり前のことです。参加者の多くは中高年以上で、足腰の強さも個人差があります。「遅くてごめんなさい」とおっしゃられることがありますが、そんな方こそ人一倍大変なのです。それでもチャレンジしている姿はとても素敵。すごいなって尊敬するし勇気をもらえます。私もいくつになっても頑張る気持ちを持っていたいな。

途中で買ったみかんを食べて、互いに励ましあいます。みかんは先月食べたものより着色も進んで甘みが強くなりました。山にぴったりの果物です。

12:30 痔のお地蔵様

12:30/高度約335m 大木の下にお地蔵様

 

痔の人がここまで来るの大変じゃない…?とみな不思議がったお地蔵様。ここまで来れば登りも終わりです。

主なご利益は痔病ですが、人探しもしてくれるそうな。縛り地蔵とか縛られ地蔵と言って、全国各地にある風習らしいのですが、なんでもお地蔵様を紐で縛りつけ、探し人が見つかったら解くそうな。ええーなんかひどい。

12:40 法華の壇

▲こんなん見ても意味わからんからやっぱり語り部は偉大

 

河瀬王子のスタンプが髑髏でしたね。えらいパンクやな~と思ったら、やっとここでその物語に出会います。

1000年以上昔、6万のお経を唱える修行をしていた円善(えんぜん)という名の僧がこの峠で亡くなります。その100年後に通りがかった修行僧の壱叡(いちえい)は修行をやり遂げようと法華経を唱えている骸骨を見つけました。熊野の帰りに通るとそのお経は止んでおり、心打たれ供養塔を建てたのだそう。

この供養塔は広川にある養源寺の礎になり、今でも供養会が執り行われているそうです。

山頂の広場で昼食

樹齢600年の椎の大樹あり眺望なし。青い空が見える広場で休憩です。トイレや雨宿りできるところはありません。平安時代は茶屋や旅籠があったそうです。紀伊路ってきっと賑やかだったんやろうなぁ。

13:25 馬頭観音

▲馬なしでは人類の発展も語れない

 

頭上に馬を乗せた観音様。手は馬口印を結んでいます。馬頭観音は旅の無事を願う目的で、全国の街道沿いや山道などに多いそうです。ですがこちらはお馬さんの供養として建てられたそうです。今と違って峠はもっと険しく、危険だったんやろうなぁ。

13:55 題目板碑

▲塔婆の板のようなものらしい

 

室町時代の石製の塔婆だそうです。日高で一番古いそう。この板碑があった法華堂は養源寺の源流と書いてあります。養源寺…って法華の壇でも出てきたな…語り部さんの話うろ覚えや…と帰って検索しましたら、こちらのサイトが関係性がわかりやすかったのでリンク貼ります。

■関連リンク きのくに風景賛歌

14:05 トイレ

▲紀伊路は歩く人すくないけどトイレはしっかりしてる所が多い
▲この辺りは黒竹の名産地だ

 

市街地に近い紀伊路ならではというか、比較的どこのトイレも新しくて設備がしっかりしていていました。この辺りで名産の黒竹が自生しています。この竹は熊野古道の杖としても利用されます。つやつやとしてきれいですが、今夏の台風でかなりやられているそうです。

14:15 金魚茶屋跡

▲現存する茶屋を求む

金魚を飼育している茶屋があったそうです。いいなぁきっと風流だったろうなぁ。旅人が素敵なカフェを求めるのは今も昔も変わらないですね。

14:25 沓掛王子

▲沓掛王子跡

 

沓掛が、峠の前後に出てくるって…私知ってる!なぜなら先月歩いた糸我峠でも出てきたからです。峠の登り下りには、わらじを履き替えるのですよ(ドヤ顔)。これから沓掛と名のつくところがあれば、靴ひもを結びなおすことにしよう。

14:30 茶屋…じゃなくてカフェ

▲カフェれん

 

茶屋跡、茶屋跡…どこにも現存する茶屋が現れずうらめしく思っていると、なんとカフェが現れました。おやつの時間!!と、お店に吸い込まれそうになるも団体行動なので立ち寄ることはできません。

笑顔の店主が窓から顔を出し私たち一行を励ましてくれました。なんだかいいお店の雰囲気しかしない。帰って検索したらやっぱり良さそう。絶対に今度また来る。

14:40 詰書(つめかき)地蔵

▲信仰心はございますか?

 

弘法様は爪でなにかと描きたいらしい。前にも似たお堂があったな、雨の日の紀伊路で見たぞ。ここのお地蔵様は信心深くないと見えないと言われますが、水にぬれると見えるそうです。乾いてましたがちゃんと見えましたよ~。

14:55 四ツ石傳貴顕聖蹟

▲川があったとか?

 

後鳥羽上皇が休憩した石だそうです。

15:00 西の馬留王子

▲西の馬留

 

こっちが西側だと改めて確認。もう日が傾きはじめているので歩く顔を照らします。沓掛と一緒で峠の前後にあったようです。

15:10 一里塚

▲こんなんありか

 

言われなきゃ見落としそうな一里塚。塀に吸収されてるパターンは初めてでおもしろい。

15:30 内ノ畑王子

▲トイレ以降、やっと休憩
▲日も暮れようとしている

 

延々と続くアスファルト。足がだるく感じます。「向こうの橋を渡ったら休憩ですよ」と語り部さんが言ってくれます。さすがに疲れて「まだかなぁ」「あと何キロ?」「うわ~まだか~」と参加者から弱音も出てきます。峠越えは登りで1時間くらいとそう長くないのですが、コース自体が長くて持久力がいります。アスファルトはしんどいなぁ。

橋を渡った内ノ畑王子でやっと休憩。リュックを下ろしハア~っと声が漏れます。みかんやチョコを配ってくれる方も。私も次から多めに持って来よう。苦しいことを一緒にやると一体感も芽生えますよ。

さてこの王子ですがちょっと変わっていて、木の枝で槌を作り、榊の木に結ぶと徳があるんだとか。「徳あり~徳あり~」と上皇たちもその風習にしたがったそう。打ち出の小づちというものがあるけど、槌って縁起の象徴やねんなぁ。

16:00 内原王子神社(高家王子)

▲なんだかいい神社
▲すぐそばを川が流れる

 

内原王子神社には背の高い木々がにょきにょき生えていて、人の手の加わったものと古くからのものがあり、大切にされてきたことがわかる居心地のいい神社でした。王子社として形の残っている貴重な神社です。合祀された神社は30を超えるそう。残念なことではありますが、たくさん神様がいるということです。しっかりお参りしましょう。

そばを流れる西川には「愛子(あいご)の淵」と解説板があります。盲目の娘が身を投げますが、観音様が救ってくれ息を吹き返したのだそうです。

スタンプを押した後、神社裏のトイレを使いストレッチをすませました。解散の駅はまだ先ですがいったんここで挨拶をします。

16:40 JR紀伊内原駅

▲見上げるのは会長さん

 

いやぁ当たり前ですが内原って地名なんですよね。だから内原王子神社があるのですね。全然おかしなことではないけど、神社の存在も知らなかったので、しょうもないところで私は納得していました。

駅前の大樹がローカル駅に似合うなぁ。行ってみたいと思っていた近くのカフェが定休で、湯浅駅まで友人と戻り温泉と食事へ。

自ら望んでやって来たのに「暑い」「しんどい」と口にして、最後はみな晴れやかな顔。知らない者同士で「また次も申し込もうね」と笑顔で別れるのが熊野古道の不思議ですね。シリーズものっていいなぁ。熊野古道をやる人って前向きな方が多いと私は感じています。

次回は11月14日(水)、11月17日(土)です。楽しみやなぁ。