あの世とこの世の境…『玉置神社』で狐のフラグを回収してきた話

玉置神社?

熊野三山をお詣りするのがスタンダードですが、忘れてはならない特別な神社が「玉置神社」です。

これぞ秘境と呼ぶにふさわしい山奥にあり「神様に呼ばれないと行けない」と、まことしやかにささやかれる一目置かれた神社。

とにかくなんかすごいとウワサ

玉置神社は和歌山県民からもちょっと特別視されます。その理由と基本情報は以下の通り。

  • 熊野三山の奥宮とよばれる
  • 吉野~熊野へ続く熊野古道『大峯奥駆け』山岳修験場の一部である
  • 樹齢3,000年を超す杉の巨木がある
  • 標高1,000m近くにある
  • 神様に呼ばれないと行けない
  • ご縁がないと辿り着けない
  • 霊験あらたか
  • 行った人みんながスゴイと言う
  • 気をもらったとか、逆にぐったりしたとか言う

 

この「神様に呼ばれないと行けない」というのは行こうすると急用ができたとか、ナビが壊れたとか、悪天候に見舞われたとか…様々な障害が自分の周りに起こると言われるためです。

熊野古道をやる私ですが、けっこうこの辺りの持ち上げ方には冷やか~に考えています。おそらくは立地の問題です。

▲駐車場でもこの景色

 

  • どこの市街地からも遠いので相当気合いを入れないと行けない
  • 山上にあり携帯の電波が届かない
  • 山の天気が変わりやすく、霧や雷雨が発生する
  • 積雪や路面凍結のため観光のシーズンが短い
  • 台風が多くどこかしら交通にトラブルが生じやすい
  • 辿りついた人は、自分が選ばれし者だ!と思いたい

 

特に最後のやつね…そもそも神様が人間を呼ぶってどういうことだ?と思わずにはいられないのですよね。

 

玉置神社へ!狐のフラグが立った!

9月に行った新宮の熊野古道阿須賀神社で出会った、自転車のおじいさんにニコニコと言われたのです。玉置には行ったかい?と。

「玉置神社には、キツネの通り道があるよ~」

▲世界遺産に追加された阿須賀神社

「は、なんのこと?」なんで新宮に来て、奈良の玉置の話が出るんだ?この親切なおじいさんは誰なんだ。もしやキツネか?

聞くと玉置のお稲荷さんには実際にキツネが出入りできる穴があると言います。え…なにそれ可愛いんですけど。ていうかキツネ見たことないんですけど。(タヌキ・シカ・アライグマ・イタチ・イノシシ・テン・サル・ウサギ・キジ・フクロウ・ムササビ程度はあります)

気になって帰ってからインターネットで検索しますが、そんな情報はない。穴なんてどこにも書いてない!

確かに玉置神社には摂社としてお稲荷さんはあるらしい。三柱神社といってHPにも「謎が多く、説明が難しいのですが…」と書かれてある。

 

玉置神社HPより引用

玉置神社境内に古くより鎮座されております三柱神社については謎が多く、説明が難しいのですが、よくご質問をいただく点などを中心に簡単にまとめさせていただきました。

まず「摂社」とは本社に付属し、本社に縁の深い神様や特別の由緒がある神様をお祀りした神社を指します。
三柱神社の神様は倉稲魂神(うがのみたまのかみ)・天御柱神(あめのみはしらのかみ)・国御柱神(くにのみはしらのかみ)の三柱と伝わります。
この倉稲魂神は京都府の伏見稲荷大社で農業や商売繁盛などの神様として、また天御柱神・国御柱神は奈良県生駒郡の龍田大社で風を司る神様としてお祀りをされていることで知られます。
三柱神社は別名「稲荷社(いなりしゃ)」とも呼ばれますが、稲荷信仰が盛んになる前から地主神(じぬしのかみ)としてお祀りをされており、厄除けや心願成就さらに精神の病(ノイローゼなど)また海上安全にも特別の霊験があるとされています。
毎年、3月の初午の日(今年は3月12日)に行われる三柱神社の例祭は初午祭とも呼ばれ、10月24日に行われる本社・玉置神社の例祭に次いで、盛大に行われます。

嘘か真かわからないが、とにかく全国の稲荷社の祖のようであり相当歴史は古いという検索結果。

そして玉置神社自体が「悪霊退散のため早玉神を奉祀したことに始まる」ということで新宮ともご縁があるらしい。だからあんなこと唐突に言ったのかな?

そしてその荒ぶる神々の「悪霊退散」の力が凄まじく、昔から狐憑きや悪霊払い厚い信仰があったそうだ。社の裏側の密室ではお祓いを行ったとかなんとか…本当??ゴーストスイーパー?

いつか行こうと思っていた玉置神社。来たな、ついに…これは神様に呼ばれてる!我こそは選ばれし者~!!

めちゃくちゃ…遠い

 

▲十津川から熊野川の舟下り…通でしょ

 

新宮で出会った素敵なガイドさんが川舟も乗られてるということで、寒くなる前に行こう!と友人と約束した熊野川舟下り

その方とは残念ながら予定が合わなかったのですが、もう11月です。友人と休みを合わせるのも難しく11月初旬の午後の舟を予約ました。

うーん…早起きしたら、午前中に玉置神社へも行けるんじゃない?ということでルート検索~♪ 田辺・白浜から2.5時間。やっぱ遠いな…。

熊野古道をやらない友人も巻き込んで、女3人のドライブです。本宮までは慣れた道。そしていくつものトンネルを抜け秘境、十津川村へ。

友人に途中で「騙された!」と訴えられたりしながら楽しいドライブです。

 

山深い高所を流れる、十津川の清流この川は和歌山に入ると「熊野川」に名を変えるのです。

熊野=霊場

あの世、浄土、禊、水垢離、三途の河…底なしに見える十津川を見てそんなイメージが頭をよぎります。

どこまでも続くつづら折の登り坂は細く、対向車は多くないのですがなにせカーブミラーの数がハンパない

「すごい道やな~今のカーブ2つミラーあったし」「あ、mapが現在地を見失った」「私のDocomo圏外になったよ」

辿りついた駐車場の標高は、登山用GPSアプリ987m。耳をパキパキさせて下車すると、高野山さながら空気が冷んやりして吐く息が白い。ここに来るまでのこの不安な道路環境も『玉置神社はすごい』と言われる心理状態を作るのでしょう。

参道、圧巻の巨木群

▲さぁ参ろう
▲山頂から玉石社を先に行くのが玄人らしいぞ

 

鳥居をくぐり参道へ進みます。凛とした冷たい空気、どえらい所に来ちゃったなという感じで私はとてもウキウキします。神秘的とか神聖とか言うべきなのでしょうが、楽しくて仕方ないのです。参道を進むと現れる巨木群!す…すごい、めっちゃいい!

▲圧倒的でかさ!!!
▲おわかりいただけただろうか!

 

好きだなと思う神社の共通点、それは巨木があることです。数千年を超える大木に生命があるということに私は感激を覚えます。玉置はそんな巨木が惜しげもなく、あちらこちらに、にょきにょきと生えているのです。うごめいているのです。この木々は一体何を見てきたのだろうか。

『大杉』の巨大さは、写真では伝わりません。なんとか工夫しましたが大きすぎて収まりません。

▲メキメキ言うのが聞こえそうな迫力

 

ご神木の『神代杉』と『夫婦杉』もすごく力強くて、筆舌に尽くしがたいとはこのこと。

火山噴火で出来た地形と地質は他と異なる植生を育んでいるそう。ここがなにかしら特別であることは、やはり間違いないのだと思いました。そこで何を感じるのかは、気象状況やその人の体調や精神性によるとはしても。

▲本社には層々たる神々がお祀りされている

 

本社も、もちろん古く歴史を感じさせる佇まい。神様の名前が、神話の始まりに登場するビッグネームばかりだと驚く友人。

本来はここが超絶パワースポットなのですが、ここに関してはいくらでも情報があるし、書き始めると収集がつかなくなりそうなので今回は割愛します。

宝物殿の襖絵とキツネの情報

社務所にお声掛けして、中の襖絵を見せていただきました(300円)。

これがなかなか素晴らしい。写真は撮れないのだけど、人間界から天上界に至る物語が描かれていて、おお!と思わずにはいられない工夫が凝らされています。その世界観と歴史を丁寧に説明をくださる神職さん、気になっていた『キツネ』のことを聞いてみました。

「キツネですか?」

最初よくわからなかったようですが、私たちが聞いた話をお伝えすると少し考えた様子で「確かに獣が通れる大きさの穴が開いています」とのこと!

「ハクビシンやアナグマが荒らすので今は塞いでしまったけど、おそらくその方が言ったのはそれのことでしょう。

 キツネの出入り道というよりは、お祓いで抜け出た霊(狐)の通るところだと山伏から聞いたことがあります。実際のキツネも出入りしていたようです。」と。

一気に真実味が増します。あったんだ!という驚きと感動。そして元々は狐憑きの悪霊が出て行く所だったということ!すごく面白い!

「しかし、みな玉置山には思い入れがあって、色んなことを言うんです。ここはあの世とこの世の境目なのでその人の持つ周波数によって見えるものが違う。あのおじいさんは誰ですか?って私には見えない人がいたり。それぞれの玉置〟って呼んでます。」

私はすごく納得しました。みな何かをここで感じて、それぞれに言いたいことを言うんだ。どれも正解じゃないし間違いでもない。山伏の言葉も、おじいさんの言葉も、わたしたちの捉え方次第。『それぞれの玉置』なるほど、そうかもしれない。

社務所を出るときいい香りが漂ってきます。「これは…カレーですね!」「ええ、今日のお昼みたいですね」お腹の虫が鳴りました。

実際の三柱神社へ

さぁ赤い鳥居が見える…お稲荷様が呼んでいる…。いよいよ三柱神社です!!!コーン!

▲三柱稲成大明神

 

神様の数え方は『』なので倉稲魂神(うがのみたまのかみ)天御柱神(あめのみはしらのかみ)国御柱神(くにのみはしらのかみ)をお祀りしていることから、この名になったようです。

解説版のご神徳には「狂気、ノイローゼ」の文字あり(!)今日の秋晴れの爽やかさとは真逆な字面です。

▲狂気、ノイローゼ…やっぱりなんかすごい

 

周囲を見渡すのですが、おっしゃられたような穴は見つからない。木彫りのお狐様はいらっしゃるのですが。

▲狐の神様

あきらめずによーく見て回ると

…あった!たぶん、きっとこれのことだ!

▲執念が実を結んだ

 

阿須賀神社のおじいさん、ありがとう!と思うと同時に、ここでかつて行われたであろう悪霊祓いを想像して不思議なものに出会った気がしました。狐や悪霊はどこに行くんやろう…この霊場から別の世界へ?

『ここはあの世と、この世の境目です』

そう信じられた歴史の欠片が、こうして実際に残っている。だから人は特別なものを感じるのかもしれません。

 

玉置神社は特別な場所、それは本当のことでした。玉石社、宿坊、山伏…もっと深い歴史物語がここにはあります。今回はここまで。