奥三河の花祭り“熊野公演”がエキサイトだった話

熊野本宮大社御創建2050年記念のイベントの1つとして、愛知県にある奥三河からはるばる和歌山の本宮町に、重要無形文化財の花祭りがやってきました。

とっても素敵なお祭りだったので、感想を書き記しておきたいと思います。あくまで個人的な感想です。詳しいことはこちらのリンクで!

■奥三河の花祭り リンク

花祭りと熊野の山伏

花祭りは、愛知県の奥三河に伝わるお祭り。重要無形民俗文化財が作られて最初に認定されたくらい民俗学的にとっても重要なものだそうです。

…全然知らなかったけど!!!!

というか、こんなブログサイト作ってるわりに物を知りませんよ。三河って言ったら愛知だなという程度。あとはサザエさんのサブちゃんくらいしか思いつきません。奥三河ってどこだー!!

▲このへん。長野と静岡の近く。

 

いただいたパンフレットには見どころの一つに「星空」とありました。他にも「温泉」「蕎麦」「チェーンソーアート」って…これもう龍神温泉やん!

さて、このお祭りですが実は熊野の山伏が奥三河に伝えたところから発展したんだそうです。山伏さんの影響力すごい。

熊野でテホヘ実行委員会のページなどをみると、この日は「何百年の時を経てここに里帰りする歴史的瞬間」らしいです。そうなのか。

なにか並々ならぬ熱意や興奮が伝わります。本宮大社2050年式典に加わるくらいですから、そりゃスゴイ関係もあるのでしょう。

 

よくわかってないけど、地元グルメを食べる

▲じぞうどのおにぎり、縁ga環のパン、さんま寿司

 

舞台は青空の広がる12月の大斎原。まずは友人と早めに来て特設テントで地元グルメです。ちなみに温泉コーヒーは無料で振る舞いがありました。寒いからありがたかった~。大斎原で何か食べるっていうのもちょっと新鮮。

撮影OKでした

▲空を舞うトンビ

 

神事の前に到着された宮司さんをお見かけし、おそるおそる写真を撮ってもいいですか?と聞くと、いいですよとのこと。というのも大斎原と本宮大社には「撮影禁止」の看板があるからです。

ちなみにこの日の空をトンビがたくさん飛んでいました。たぶん50羽くらい。大斎原の周辺ではたまに見る光景ですが、さすがにちょっと神がかって見えました。縁起がいいと宮司さんも挨拶でおっしゃられていました。

 

大斎原は、大湯原??

さて、本宮の大斎原は「おおゆのはら」と読みます。熊野川と音無川に挟まれるように中州があり、明治22年の水害まではここに社殿がありました。「斎」は鎮めるという意味だと私は語り部さんから聞いています。

「おおゆのはらって読みが不思議」と思ったことも最近は忘れていましたが、餓鬼阿弥になった小栗判官が復活した湯峯温泉に象徴されるように「お湯」は熊野を構成する重要なワードです。

▲釜に火をつけて湯を沸かす

 

この花祭りは舞庭(まいど)と呼ばれる四角形の演舞場の中心に釜が据えられ、お清めのあと火打ち石でお湯を沸かすところから始まります。

すんごい省略しますが様々な舞が披露されたあと、最後はそのお湯を辺りの観客に撒き散らし、浴びせまくり、びしゃびしゃになって無病息災を約束されるという賑やかなフィナーレを迎えます。

本宮で行われたのは2時間のショートバージョンですが、実際は昼夜を通して披露されるそうな。

▲お餅撒き

 

スーパー銭湯に行って「このお湯は神の与えた大地のエネルギーなり~!!」とは思いませんが、いにしえの人々は心身の傷を癒してくれるこのお湯にも霊力を感じ、感謝と敬意を抱いたのでしょう。

赤子が生まれれば産湯へ入れるし、熱湯で清め消毒をします。無病息災、浄化、ということでしょう。

この花祭りは私にはとても穏やかな神事に見えました。鬼の登場に「こわいいい〜」と怯える子供、ニコニコの大人達。登場する鬼、おつるひゃる、みこ、少年たち。

鬼は一眼レフの取材班の前でポーズを決めてくれるし、舞の合間には5分間の記念撮影タイムも設定されていて、笑いがおきました。

このお祭りのもつ温かさは、やはりお湯という性質からでしょうか。

 

文化の融合

そしてそんな花祭りの前半には、熊野三山をはじめとする様々なワードがこれでもか!と登場する唄があり、これには「おお!」と感激しました。この歌詞はぜひ文字で読んでみたい。

 

春日大社とか白山とか…こんなにたくさんの文化を取り入れた奥三河の人々って、きっととても柔和で素直だったんだろうなぁと思いました。これが完成するまでに色んな出会いやドラマがあったはずです。

名もなき人々が繋いできた歴史文化の尊さを、熊野古道やっていると最近ひしひしと感じるようになりました。

今回の公演もきっと、現代のキーパーソン達がつながり実現されたはず。素敵ですね。

様々な舞

てーほへてほへ。不思議なかけごえと笛・太鼓の静かな音色。神聖な儀式ですが、神楽殿で舞う能のような敷居の高い緊張感はなく、距離も近くてスッと入りこめる感じがします。観客も一緒になって楽しむお祭りなんだそうです。

▲塗られたい、でも塗られたくない… 味噌のついた大根

 

「おつるひゃる、みこ」ではしゃもじについたお米や、味噌を顔に塗られます。歓声をあげて逃げる子供たち、味噌を塗られて苦笑いの大人たち。私もお米をぬってもらいました。

▲山割鬼 コミカルな動き

 

後半に登場したのは山割鬼は、本宮の祭神であるスサノオ。どの辺りがスサノオなのでしょうか、その一挙一動にも意味があるはずで興味がわいてきますね。

そしてフィナーレでは少年4人が釜のお湯を、周囲にまき散らすのです。もうか、もうかとワクワクしますが焦らしてくれます。「太地のくじら踊りにも似てる」という声が聞こえてきました。

手に持った藁が釜に浸かった!と思ったら勢いよく周りにお湯が飛びます!

▲釜の湯を浴びよう!

 

もうみんなキャーキャー言います。これを浴びると1年間無病息災です。ワークマンレインウェアでも顔面は守れませんでしたよ。やったね!ありがとうございます!

子猫や子犬が元気いっぱいであるのと一緒で少年もエネルギーの塊。きっとこんな風にお祭りでストレスなんかも発散されたんだろうな。神事だから悪、親戚ももちろん村人総出のイベントなのできっと平和的です。

時空を旅しよう

熊野三山は過去(前世)現在(現世)未来(来世)を救うとされます。熊野古道を歩いていると様々な時代を旅できるなーと思います。平安だったり江戸だったり、一瞬で1000年の月日をワープします。

熊野古道 is タイムトラベル!です。

あくまで“文化”遺産であって自然遺産ではない。この“歴史文化”こそが肝なので、学んで想像することがポイントです。冒険とイマジネーションの世界です。どこかで聞いたことのあるフレーズ?

タイムトラベルは過去だけではありません。いつか来る未来へも旅をします。

話が壮大でしょうか?でもいつか私たちもいにしえ人となり過去になります。1000年先を考えてみること。本宮は創建2050年ですからきっと1000年なんてあっ!と言う間。

きっと人ひとりがこの時代を築くことができる。素敵な神事を見せてもらって改めてそんな風に感じました。