【徹底解説】熊野古道1,000kmの全ルート|概要・魅力・歩き方・注意

熊野古道って長い!

紀伊半島の全ての熊野古道を合わせると1,000kmとも言われます。東海道53次(東京~大阪)が約500㎞だそうなので、めっちゃ長い!ですね。

これから熊野古道を歩こうと思っているあなたは、すでに様々な情報を目にしているでしょう。「おすすめコースはここ!」「大門坂を歩いてみた」「初心者でも歩けるコース」など。もちろんぜひ参考にしていただきたいのですが、多くはとても限定的な紹介であることが多いはずです。

その理由は3つ考えられます。

  1. 熊野古道に特化しているサイトが少ないこと
  2. 旅行・観光サイトは一部しか取材していない、あるいは実際に歩いていない
  3. 自治体は自分のエリア外のことが書けない

 

1,000kmの1%でも歩きたい気持ちがあるなら、まずは全体像を把握してからどこを歩くか考えてみてはいかがでしょうか。木を見て森を見ずというように10㎞だけ歩いて「これが熊野古道だ!」と思っちゃあ~いけません。本宮大社まで頑張ってゴールして「結局、熊野古道ってなんなんですか?」とたまたま出会った語り部さんに質問する人がいるのです。遠くから来て、苦しい思いをして…よくわからないままなんて、めちゃくちゃもったいないのです。

極論を言えば、熊野古道なんてどこを歩いたっていいのです。正解はありません。でも「今、自分が熊野古道の中でどういう場所にいるのか」ということくらいは、知っておくのとそうでないのとは大違いです。まずはそのイメージ作りから始めましょう。下記にその解説を設けました。なにしろ「全ルート解説」ですからいくら添削してもかなりの長文です。それはもう長ーーーーーい!熊野古道ですから。

ですが、旅を計画している時、これを読んでいる瞬間、すでにあなたの熊野参詣は始まっています。さぁ覚悟して一歩を踏み出しましょう。貴賤を問わず、信不信を問わず、すべての老若男女を受け入れた熊野へ!

 

※簡単に知りたい方は半分くらいのボリュームで書いたこちら↓の記事を参照ください。全ルート5段階の比較表つきです。

■【熊野古道=紀伊半島?】全ルート比較表でイメージをつかむ

 

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熊野古道の7つの参詣道

以下が紀伊半島に存在する熊野古道の全体図です。色んなところから道が延びているのがわかります。ぜんぶ合わせて1,000kmとか言われます。ちなみに私は、実際に距離をGPS登山アプリで測って歩いています。

▲京都から載ってるMAPがなくて自作したよ~転用はお声掛けください

今回は7つのルートに分けて解説します。全部読みたくない方はサイト上部にある「目次」から選択ください。

1.紀伊路/2.中辺路/3.大辺路/4.小辺路/5.伊勢路/6.大峯奥駈道/7.高野参詣道

 

①紀伊路(きいじ) 九十九王子を辿り、俗世から熊野へ

ルート

世界遺産の熊野古道は、和歌山・奈良・三重県が登録されているのでこの3県が中心に熊野古道の情報発信につとめています。

しかし本当の熊野古道(紀伊路)のスタートは、京都・大阪です。

▲熊野街道と呼ばれるけど大阪も紀伊路の一部だし、京都からの川もまた重要な道でした

 

上皇・法皇などの貴族たちは京の都、伏見から淀川を船で下り大阪の八軒家浜に到着します。ここから長ーい熊野参詣が始まりました。

大阪の道は熊野古道ではなく“熊野街道”と呼ばれ、大都会の真ん中、天満橋駅(八軒家浜)から上町台地を南下するたいへん歴史ある道ですアスファルトに覆われたものの本来は京都・大阪からすべてが熊野古道の紀伊路でした。

■大阪のマップは和歌山県でなく大阪府のページからダウンロードできます→“大阪府 熊野街道”

2004年の世界遺産登録後、たくさんの人が歩きはじめたのが和歌山の中辺路でした。紀伊路は残念ながら世界遺産に登録されていないのです。

しかし、その人気の中辺路も元々は紀伊路の一部だったのです。かつては、熊野街道+紀伊路+中辺路=紀伊路でした。熊野の御子神を祀った九十九王子がこれを示しています。

▲水色が川の道、そして赤色が陸の道。黒い点は九十九王子。

 

魅力

和歌山から歩くにしろ、大阪から歩くにしろ、基本的に都市部からのスタートとなるため舗装道が9割以上です。

しかし時代や景色が変わったとはいえ、“都市部から地方への旅”であることに昔も今も変わりありません。便利で物にあふれた都から、不便で険しく何もない大自然の熊野へ。少しずづ体を慣らし、九十九王子や神社を辿るのです。

1つ目のゴールである熊野本宮大社までは約2週間。感涙にむせぶのは、この長い道のりがあったからでした。

現在の紀伊路にも自然がところどころ現れます。林道、農道、竹林なども交わりバリエーションが豊かで、途中の峠越えなどは古道らしい雰囲気や、美しい海の望める風光明媚な場所も残っています。

たま駅長で有名なわかやま電鉄に乗ったり、和菓子やみかんを買って食べたり、醤油や干物を買って帰ったり。地方都市ならではのおもしろさもあります。

人々の生活と歴史の道が交互に現れる、そのコントラストが紀伊路の魅力ではないでしょうか。

歩き方

個人で歩いている人は少なく、ツアー団体やイベントが中心です。特に大阪の熊野街道は住んでいる人も知らないことがあるくらいで熊野古道の中で知名度ワーストNo.1です。あんなもの熊野古道と呼ばないと言う人もあるでしょう。

しかし主要道路・高速・JR、すべて熊野古道に沿っているのでアクセスの良さもNo.1です。平坦な道が多いため幅広い年代で歩けます。スニーカーで十分ですし、本格装備がなくても歩けます。特に京阪神在住なら分割踏破におすすめです。毎日の散歩が続かない人も紀伊路をはじめれば目標ができて、前向きに健康意識が高まるはずです。(ただし道中の買い食いはほどほどに!)

車の場合、和歌山に入ると小さな駅は周辺にパーキングのないところが多く情報もあまりありません。県北部のウォークなら海南駅を中心にすると1日500円程度で停められます。

和歌山県内は解説看板も設置されています。しかし実際は歩いてみると、なんのへんてつもない景観だったりしますので、歴史好きでない方や初めての熊野古道でよくわからない方は語り部団体の主催する企画が私は一押しです。

観光客向けではないかもしれませんが、ゆっくり肩ひじ張らず始められる熊野古道が紀伊路です。

関連リンク

【2018イベントカレンダー】 初心者におすすめ!ガイド付きイベントまとめ

 

また、この九十九王子ルート360㎞の1人旅を2019年春に予定しています。応援くださいね!

http://kumanolog.com/2018/12/16/kumanokodo360/

注意点

紀伊路の道標には注意が必要です。和歌山~田辺へはいくつもの市町村をまたがるため看板のデザインも色々です。足元に埋め込まれていることもあります。大阪府内は熊野街道としての道標はほぼありません。

また、世界遺産でないため県のHPにも通行止め情報などが公開されません。人の暮らす道沿いなのでほとんど問題ありませんが、大きな台風の後などは念のため行程に余裕を持って出発してください。

②中辺路(なかへち) これなしに語れない、一番人気の王道

ルート

▲紀伊半島南部を横断するのが中辺路

 

紀伊田辺から熊野三山へのルートが中辺路です。田辺の市街地から本宮大社へ。そして本宮から速玉大社へは熊野川で舟下り。(歩かない川の道として世界遺産になっています)そしてそこから那智大社へ歩き、また熊野本宮へ歩いてもどります。

つまり中辺路は本宮・速玉・那智の、熊野三山に到達するクライマックスのルートです。もちろん一番人気。

 

魅力

中辺路の魅力はその歴史や自然の美しさです。「THE 熊野古道」という景色と出会えるでしょう。語り部がいなくても、熊野古道がなにかよく分からなくても、山の中をもくもくと歩く清々しさ、あるいはその苦しさは日常で経験しがたいものです。美しい紀伊山地の山なみや清流に心が洗われ、熊野の神々のいる三社をめぐることができます。

しかし、私が全ての熊野古道の中で中辺路が突出している点、おすすめする理由は、中辺路はもっとも情報が集めやすいことだと考えます。

ほとんどが山道でアップダウンもあります。紀伊路のようにやさしくはありません。普段歩かない人なら蘇りどころかぐったりして全身筋肉痛。もちろん装備も必要ですし、ある程度の登山知識も必要です。日没にも注意。路線バスの本数は少ないし、わずかな商店やカフェの閉店時間はあまりに早く、臨時休業も多い。田舎ならではの不便さは満載です。

でもそれらはインターネットで調べることができるでしょう。人気のルートにはそれだけ情報があります。海外からの観光客でさえ一人で歩いているのですから、日本人ならなおのこと難しくはないでしょう。

歩き方

観光客がもっとも多く、世界中から多くの人々がやってくるのが中辺路です。もちろん全員が中辺路のすべてを歩くことが出来る人ばかりでありません。和歌山観光に2~3時間の古道体験を盛り込む程度なら、発心門~本宮大社(約7㎞)、または大門坂~那智大社と那智の滝(約2.5㎞)が観光情報誌などでよく取り上げられます。

観光客向けの情報は以下のリンクでまとめています。

http://kumanolog.com/2018/10/09/why-nakahechi/

いや、もっと本格的に丸一日歩きたいという場合はたくさんの選択肢があります。しかしまずは滝尻王子から熊野本宮大社への38㎞が王道でしょう。これは分割踏破の方もいますし、途中の旅館や民宿をつかって1泊2日か、2泊3日で歩けます。(前後泊含みません)

さらに大雲・小雲取越を追加して全行程を約1週間歩く旅のスタイルも、近年は外国の方を中心に大変人気。中辺路の民宿はホスピタリティが高く、新しく営業をはじめるオシャレな施設もあります。和歌山の名物料理も味わえ、多種多様な生き方や出会いが待っているでしょう。

注意点

タクシーが熊野本宮大社に1台程度しか常駐していません。タクシーがたくさんあるような市街までは車で軽く1時間の距離です。呼んですぐには来れません。

なので路線バスを使いこなすことが最も重要なことです。もちろん乗降も調べ方も難しくはないのですが、何しろ本数が少ないのと、見慣れない地名に戸惑うことでしょう。前もってしっかり計画してください。

また、冬は一部で積雪や路面凍結があります。自家用車の場合であっても冬は注意してください。速玉大社は積雪はまずありませんが、那智山は強い寒気が流れ込んで薄く積もったことが過去にはあります。これは稀ですが、しかし瀧があるくらいですから周辺は雪があろうとなかろうと1、2月はめっちゃくちゃ寒い!!です。手袋、マフラー、帽子をお忘れなく。

また中辺路の道標はとても役立ちますので、これだけきちんと押さえればまず迷いません。下記のリンクで実際の道標をまとめていますのでご覧ください。

http://kumanolog.com/2018/10/15/michishirube/

③大辺路

ルート

▲世界遺産登録個所は少なくなるが、これから注目のエリア

 

田辺から那智に向かう海沿いのルートで、距離が一番長い大回りの古道です。古道らしさの残るところは多くありませんが、広大な海と豊かな緑の両方を楽しめます。そのため時間に余裕のある民衆や、江戸時代は文人墨客が歩いたそうです。

2004年の世界遺産登録の時点では不明瞭な道や整備が間に合わずすべてを歩くことができませんでしたが、地域の方々の尽力により現在はすべてを歩くことが出来ます。2016年には一部が世界遺産に追加登録もされました。

魅力

大峯奥駆のようなの山岳の険しさがあれば登山ファンも歩きますが、それほどではありません。そして県庁所在地の近い紀伊路と違って周辺人口が少ない。ということで、熊野古道の中ではマイナーなルートですが、自分のペースであまり人に会わず歩けるのが魅力だと言えます。山道をのぞいて、国道沿いを自転車で旅をする方もいるようです。

そして海にも歴史があります。極楽浄土を求めた補陀落、芦雪・応挙の無量寺、トルコとの友情の歴史、古式捕鯨など・・・もちろん他のルートにも言えることですが道の歴史文化はなにも熊野参詣に関することだけではありません。

様々な視点で歩けば、絶景はさらに思い出深いものになるでしょう。また海の幸、魚介類のグルメが楽しめるのが他の熊野古道にはない最高なところです。

歩き方

同じマイナールートでも紀伊路とは人口が違うので、民家や商店もうんと少ないです。九十九王子もなく残っている史跡も多くはありません。なので踏破せず「富田坂」「長井坂」「仏坂」など主要スポットだけを歩く方が多くなります。

語り部団体のイベントもまだ多くはありません。それでもこのマイナールートをやろうという人の多くは、他の熊野古道も歩いてきた方たちです。もちろん地元だけど熊野古道ぜんぜん歩いてないという方も参加しますが、「遠方から初めての熊野古道」というルートではないでしょう。リュックに様々な山の名前のキーホルダーをぶら下げた強者がそろいます。

しかし有志の尽力により、看板など少しずつ整備されています。すさみや串本に新たにホテルマリオットもオープン予定です。これからの道であると言えるでしょう。

 

注意点

電車利用の場合、紀伊路と同じ線上にあるように見えますが本数がぐっと減ります。JR以外の公共交通機関はコミュニティバスになります。京阪神からも伊勢路側からも遠くなり、決してアクセスがいいとは言えません。

無人駅もあるような田舎なので車の場合は駐車場探しに苦労するかもしれません。白浜駅北側は1日500円なので踏破スタートはここがおすすめです。

 

④小辺路 高野山からの本格登山コース

 

ルート

 

1,000m級の霊峰にかこまれた宗教都市 高野山から本宮へ歩くルートです。

熊野古道の参詣者だけでなく、登山ファンをも魅了する本格的な縦走コース。体力があり健脚でないと歩けません。管理人は2019年に挑戦予定。

魅力

大自然がなんと言っても魅力です。

熊野古道でもっとも人気の中辺路も、自然が多い山道です。しかしさらに大自然です。日本アルプスと比べると低山と言われますが、それでも標高は1,000mです。平地より少なくとも気温は6度下がり、季節が進むのも早くて年によっては11月に樹氷を見ることもできます。雪の小辺路をあえて歩く登山ファンもいます。王子の一つもありませんが、その大自然がなにより美しく価値のあるものなのです。

そして高野山です。もはや説明不要の仏教聖地。日本三霊場の一つです。奥ノ院、壇上伽藍、金剛峰寺などを観光するのはマストでしょう。熊野三山も神仏習合ですが、高野山は「THE仏教」という世界です。特に宿坊泊を強くおすすめします。

小辺路を歩くときには日程に余裕をもって、高野山や本宮の観光をぜひ盛り込んでください。熊野の神道や、山岳信仰、仏教世界のすべてが凝縮されています。

歩き方

一般的には4泊5日(高野山泊も含む)のため、ゴールデンウィークなどの連休が人気です。また高野山の紅葉シーズンである10~11月は、1年の中でも一番人気でひどい渋滞もあるほどです。宿泊施設は限られるので、計画・予約はなるべく早くすることです。日帰りの分割踏破はアクセス的にかなり難しくなります。

小辺路は健脚向きなので、かなりハイレベルなウォーカーが多くなります。熊野古道の一つというより、登山そのものを楽しみに来る方も多い場所です。その分、登山レポートなどある程度の情報がインターネットでは検索できます。

また和歌山から奈良の山域に入りますので、奈良県の発信する情報は特に有用です。

注意点

ここまで来ると田舎とかいうレベルではありません。時々集落があるとは言ってもとにかく山!です。給水ポイントも宿泊施設もアクセスも、選択肢は限られますので十分な計画が必要となります。

また着替えなども持って歩く場合は、負担軽減のための工夫や装備ももちろん必須です。

もうこの注意点は言い出すときりがありません。要するに登山です。不安であればもちろんガイド付きが最も安全でしょう。

 

⑤大峯奥駆道 人を寄せ付けぬ山岳信仰の原点

ルート

 

吉野と言えば桜の名所ですが、ここは山伏の修験の霊場です。

その吉野から本宮へ向かう大峯奥駆道は標高1,000~1,900mの紀伊半島の山脈を80㎞ほども駆け抜ける修験道であり、登山としても過酷なロングコースです。

魅力

大峰山系は、熊野の原点と言っても過言ではありません。それは日本の宗教にとっても同じです。

山、川、滝、岩、樹…すべてに精霊や神が宿るのです。これは山伏が開祖した山岳信仰からはじまっています。険しい山々を駆け巡り、滝に打たれ、祈り、想像を絶する修行の末に熊野の霊力を授かった彼らが、人々にその熊野の偉大さを広めたのです。

その歴史は古く、また恐ろしいまでの手つかずの自然の中には修行の痕跡が残ります。今でも修験道として利用されているのです。それら宗教と自然が一体になった景観は、単に「絶景」と呼べるものではありません。行ったことないけど!

歩き方

一般的に行ける場所ではありません。もちろん吉野を観光するだけなら可能ですが、歩くとなると踏破の場合は標準で6日間を要します。分割踏破、日帰りで往復などもありますが、かなりハードな行程であることに変わりありません。

宿泊の場合は小さな山小屋かテントなどの野営となり、しかもその間の水・食糧などほぼすべての荷物を背負って歩くのですから人並み以上の体力、技術、精神力が必要となります。

また日本で唯一、女人結界が残っており女性は一部歩くことができない場所もあります。管理人は女性なので、特にこの辺りの歴史背景には関心があります。歩きたいとか歩かせろとか思ってませんが、いずれもっとよく勉強したいし、時代の流れとどうここが向き合うのか、文化とは、平等とは、伝統とは、日本とは、深く考えるポイントになると思っています。歩けなくてくやしいと思うのか、羨ましいと思うのか…ここに到達するためにもっと歩かなければならないと勝手に考えています。なので大峯は憧れであり、最後のお楽しみです。

そんなあまりにも激しい修験道ですが、紀伊半島の霊場と参詣道を象徴する重要なルートの一つです。

注意点

大峰奥駆けをやろうと言う人は、私なんかよりずっと玄人のはずです。ここで述べることはNOTHHINGです。

 

⑥伊勢路 神宮よりはじまる

ルート

 

伊勢神宮から熊野速玉大社までの約170㎞。

「伊勢へ七度、熊野へ三度」というほど、この2つは人々にとって憧れの地でした。日本の神社の中でも別格の伊勢神宮。その伊勢へ参り、その後さらに熊野参りへ南下した道が伊勢路です。

魅力

いくつもの峠を越えるこのルートもまた、海と山のおりなす多彩な景観美を楽しめます。紀伊路や中辺路が主に貴族が歩いた道であったのに対し、古くから庶民の道として利用されてきました。また街道としての機能も強く、荷車を走らせるため道幅が広いところもあります。

スタート伊勢神宮、ゴール熊野速玉大社というのは、他の熊野古道に比べてわかりやすい点であると言えます。

花の巌谷など、神武東征とも重なるこの道は、神話の物語を知っておくとおもしろいでしょう。

私のおすすめは日本神話.comというサイト。なかなか理解しづらい神々の世界ですが、口語的で写真やイラストを入れてわかりやすく解説してくれています。

歩き方

すごく当たり前のことですが三重県です。わかってるわと言われそうですが、これはけっこうポイント。和歌山で暮らしていて伊勢路の資料なんてまず出会いません。ニュースも入ってきません。

三重と和歌山の県庁所在地は紀伊半島の東西で遠く離れていて、しかも真ん中を奈良の偉大な山の皆さんがどーんといらっしゃいます。エリアが全然違います。紀伊半島めっちゃ広いのです。

そういう地形ですので仕方のないところではありますが、ともあれそれぞれ県単位でがんばっています。(交流や協力ももちろんありますが、日本の観光というのは基本的に自治体単位なのです)

中辺路を歩いたついでに伊勢路の資料を探そう、というのはなかなか難しいので請求してしまった方が早いでしょう。

伊勢路のインターネットの公式の情報はかなり見やすく整備されています。なんなら和歌山のサイトよりも、ポップで女子目線で訴求力があるなぁと思うくらい。

そして伊勢路の道標は、和歌山県内が中辺路以外は統一されていないのに対しほぼ統一されています。スマートな縦長の三重県ならではの統制がとれているなぁと和歌山県民の私は勝手に思うのですが、そんなことない?(和歌山は紀州藩、田辺藩、新宮藩でわかれてたのでそれぞれに独自文化を築いている感があります。そしてエリアが広範囲。)

さて、伊勢路も紀伊路と同じくJR紀勢本線と路線バスで分割踏破が可能です(本数は多くない)。観光+古道体験のモデルコースもたくさんあるので、体力や日程に応じて選ぶことができ、中辺路と同じく初心者に最適と言えます。

注意点

中辺路と同じで、初心者向けと言っても山道や石畳の道です。私はトレッキングシューズでしたが雨の馬越峠で過去に捻挫しています。天候や季節によってはもちろんレベルも変わります。きちんと準備して行きましょう。

そして電車、路線バスの時間はきちんと調べ余裕を持って計画することが何より大切です。

 

⑦高野参詣道「高野七口」 霊場へのバリエーション

ルート

 

熊野古道を歩くといえば、熊野三山を誰もが目指しますがそれだけではありません。

日本屈指の霊場 高野山へ続く道もまた世界遺産です。それは7つのルートで構成され、高野七口と呼ばれます。

そのうち世界遺産は町石道と黒河道、そして小辺路の3つ。他の熊野古道と違うのは真言密教の仏教の世界が色濃く残るところと、そして標高約1,000mを登ること。

魅力

とにかく高野山です。この仏教聖地の歴史を築いてきたのがこれらの道なのです。当然、弘法大師空海の伝承も道中で出会います。高野山麓にも慈尊院などの世界遺産の寺院はじめ、数えきれない物語があります。

もし、熊野古道もいいけど高野山に行きたい!そして歴史の道を歩きたい!と思うなら町石道がやはり一番でしょう。(個人的には人魚のミイラのある京大阪道も好きですがマニアック)

それと同じ和歌山ですが中辺路とは名物も違ってきます。九度山は柿の名産地ですから、秋に行くならぜひ買って帰ってください。柿の葉寿司は旅のお供に最高です。ゴマ豆腐などの精進料理は、高野山周辺ならではです。

 

歩き方

もちろん他の熊野古道も峠越え尾根歩きなどアップダウンはありますが、高野山ほどの標高になるとウォークというよりハイキングです。

夏でも冷房のいらない高野山は、標高が上がるにつれて気温の変化も如実に体感できます。

そして入り口が7つというのはそれぞれのスタート地点に行き、7回高野山に行く必要があるということ。七口の全踏破はアクセスが大変不便で分割となります。町石道や黒河道以外は歩く人もあまりなく情報もわずかですが、七口押印帳を集めたりその不便さやマニアックさを楽しめるならやる甲斐はあるでしょう。

注意点

ルートによっては誰にも出会わない、しかも携帯電波も届かない場所もあります。そしてルートによっては情報が大変少ないです。

以下にその難しさをまとめていますのでご覧ください。

http://kumanolog.com/2018/09/04/koyasan-koyananakuchi/

 

この記事を書いた人

ちなみに私が実際に歩いているのは、中辺路と紀伊路をメインに合計200㎞程度…。和歌山在住なので繰り返し歩いてる個所もあり、総距離は倍くらいになりますが(言い訳)、まだまだこれからです。ちなみに1,000kmの全踏破をして説得力あるサイト作るのが目標です。大阪からのロングトレイルも計画中。

■2019春|京都・大阪・和歌山360㎞!熊野古道の旅をはじめます

というわけで、まだ歩いていない場所の情報は諸先輩方から学んだものとなります。ちょいちょい更新いたしますのでご容赦くださいませ。